よく煮立たせろよ
おう
男達は大鍋に湯を沸かしていた。
皆で集まり何十人もの村人で楽しく一つの鍋を囲んで祭りを楽しむための、猪や鹿一匹を煮ることが出来る大きな奴だ。川辺でそれに湯を張るのは別に珍しいことではない、祭事で使うことも確かだが、狩りで大物がとれたとき、協力した人員が多く配分が難しい場合などでは、獲ったその場で大勢に振る舞って大猟を祝うと同時に、配分を巡る争いを回避する。これもまた小さな祭事であることに間違いは無い。
それ以外にも「鍋は定期的に使ってやらなければ九十九に取られる」という信心は根深く、しばらく出番がない道具達を供養する目的で無理に使うこともある。九十九祓という習慣だ。これも一つの祭事ではあるが、民俗性が著しく強く開催時期も定まっていない、家の人間が気が向いたときに「そろそろ」といって行われる慣習であって、神事と言うほどではない。だが、確かに神妖の存在が背後にある祭事ではあった。九十九に取られるというのは、そのものが紛失する以外に、壊れる気配がなかったにも拘わらず突然破損することも言う。道具が気を損ねたのだと、言うことだ。
猪の時と同じくらいでいいかね
そんなもんだろう
だから川辺で季節外れに大鍋に火をかけていたとしても、実はそう珍しい光景ではない。特にこうした祭事用の道具というのは、年に決まった数度しか使わない上に傍に神妖がいるせいで、九十九に狙われやすくなるのだという。だからこの光景も傍目から見ても確かに、道具を慰める日常の光景のようでもあった。
薪を多く焼べて、火の勢いはなかなかのものだ。鍋にの湯はぐらぐら煮たって泡を立て湯気を巻き上げて水面を激しく揺らしている。こうして激しく使ってやることもまた、道具を慰めるのにはいいのだとも言う、これは家によって違った。余り激しく使ってしまうと逆に機嫌を損ねるという家もある。こればかりは家庭の慣習であり統一されていないようだった。家々も、隣の家の慣習をどうこう言うことはない、自分たちがどうこう言われたくないからでもあるし、そうした差異がむしろ尊重されるべきことだというのは、博麗神社の教えでもあった。
おまえんちの九十九祓は随分火力が強いんだなあ
これは九十九祓じゃねえだろ
男達の側で、季節外れの芋煮会めいた大鍋が、茹だっていた。
些細な喧嘩だった、といえばそれまでだ。少々いつもよりもきつい言い合いになったことは否めない。
あんたの助けなんて要らないわよ
おー言ったな。今まで私がどれだけ霊夢を手伝ってきたと
逆でしょう、いつもいつも面倒事に巻き込んで。私がいなかったら、あんた何回死んでたのよ
この幻想郷に異変のある度に、幻想郷の素敵な巫女こと博麗霊夢は、幼馴染の魔法使いである霧雨魔理沙と連れ立ってそれに首を突っ込み、紆余曲折あるとはいえそれぞれ解決してきた。戦友、とも、親友、とも言えるし、それ以上の仲でもある。
霊夢の助けなんかなくったって私は平気なんだよ、いつもいいところで出てきていいとこだけ持ってくじゃねえか
はあ?それこっちのせりふなんだけど。
だがお互いどうにも素直でないタイミングがある;霊夢は立場上どうしても高慢な性格が否めないし、根っからの跳ねっ返りである魔理沙も負けず劣らずだ。その歯車がお互いに凸となって巡り合ったとき(そしてそれは相当に高い頻度になる)、必ず火花をちらして喧嘩する。周囲の者はそれを定例行事のように捉えていたし、今更止めに入ろうとする者も仲裁しようとする者もいない;それこそが仲の良い証拠なのだと、知れているから。
今回も、まさにそれだった、ただのそれだった。
私の妖怪退治に、二度と関わらないでくれる?
あーわかったぜ、お前のピンチになんか絶対駆けつけてやらねーからな
あんたが変に関わったりしない限り、ピンチにはならないって、さっきから言ってるわよね?その自信過剰な頭の中をどうにか掃除しなさいよ。とっちらかってどこに何があるのかもわからないあんたの部屋と一緒の、そのオツムの中をよ。チルノと一緒に勉強し直したほうがいいんじゃないの?
霊夢の言葉に、魔理沙がいよいよキレて、霊夢の胸ぐらを掴み上げる。
今日の喧嘩はいつもよりも随分と、質が悪いように見える;だがいつもなら傍観して笑い、行き過ぎたときには止める良き仲間が、今はここにはいなかった。二人は不幸にも思う存分に言葉を売買できてしまう。
んだと、コラ。誰が自信過剰だ、お前以上のナルシストがどこにいるってんだ、この幻想郷中探し回ったっていやしねえよ。お前なんか、妖怪退治を名目に妖怪たちと仲良しごっこしてるだけの、詐欺師じゃねえか!お前に比べりゃ嗤いながら徹底的に妖怪退治をやってる東風谷の方が、よっぽど人間の味方だよ。それを、博麗神社の扁額に乗っかって、えらそーにしやがって!
胸ぐらを掴んで霊夢に反論する魔理沙に向かって、霊夢は唾を吐きかけて、剰えいやらしい目つきで魔理沙を見て、嘲った表情で嗤う。
その詐欺師に、一度だってまともに勝てたことのないザァコ魔法使いはどこの誰かしら?強がりばっかりで、大した力もない。独自の魔法なんて言って誰かのマネばっかり。どこにもオリジナリティはないし、誰かの二番煎じで誰にも追いつけない。何が弾幕はパワーよ、力だって大したことないくせに。あんた程度の魔法使いが、私の助けになってるですって?自惚れんじゃないわよ、はーばかばかしい。家に捨てられた哀れな娘が、きゃんきゃん喚いて五月蝿いこと
てめ……言っていいことと悪いことがあるぞ……
言って悪いことって何かしら。本当のことを言って悪いというのなら、そうね確かに私は詐欺師かも?はっはー。本当のことを言ってキレられるんじゃ、理不尽ねー?それとも、そんな場当たりな言い方しかできないのが、あんたの精々だってこと?そうね、そうよね、わかってたわ。それじゃあ整然とした理論構造が必要って言われる魔術がいつまでもひよっこなのも、納得がいくってものだわ
怒り心頭に至った魔理沙がいよいよ手を上げようとしたとき、霊夢は「ばかなやつ」と卑しいものを見る視線を投げつけたあとで、ひらりとその手を掴んで捻り、そのままその体を投げ捨てる。魔理沙は仰向けに地面に叩きつけられ、空を見た顔面に霊夢の草履の裏面が見えた。魔理沙の手は霊夢を殴ることはなかった、それに相応して霊夢の足も魔理沙を踏みつけることはなかったが、そうして寸止めにした霊夢に、魔理沙は手を抜かれたと感じて余計に怒りを強める。だが、それ以上の行動はなかった、魔理沙にしても手を上げてしまったことは後悔のあることだったし何より、霊夢に敵うとは、やはり思っていなかったのだ。
おとといきなさいな、クソザコ魔法使い
一見して無防備に見える背中を向けて、霊夢は拝殿の中に戻る。魔理沙は歯ぎしりしながらそれを見ているだけだった。
こんな口汚い喧嘩は、霊夢と魔理沙の間であっても滅多なことではない。滅多なことではないが、数年に一度の地震程度にはあることだった。だが、その数年に一度程度の出来事に、霊夢も、魔理沙も、後悔することになるとは、このとき思ってもいなかった。
境内の掃除用に使う箒が襤褸になったのでと博麗霊夢が自由市まで買いに来たその途次、彼女は突然茂みに連れ込まれて声も出す暇さえ無かった。人通りが全くないとの程ではない道行き、恐らく用意周到な行動だったに違いなかった。博麗霊夢が油断していたことは否めない;人の多い自由市は博麗神社と目と鼻の先、間に妖怪が悪さをするのに適した空白地帯は殆ど無いはずだからと、札も陰陽玉も置いてきていたのだ。本当に社務所で寝ているままの姿に(流石に社務所でも祭衣は着ている)、値切り倒すつもりで箒の相場よりも少し少ない程度の銭だけを持ってきていた。
ただの人攫いにしては随分莫迦なことをしたものだ:博麗霊夢は思った。私を略取して身代金でも要求しようものなら支配級の神妖が交渉相手になる、通用するはずがない、と。それはそうした利害関係の渦中に身を置く神妖でなくとも、ただの民草であってもよく知っていることだ。だからこそ逆に、博麗の巫女は男達の背後に妖の気配を感じていた。
霊夢ちゃん、処女じゃなかったんだね……
はあ?
信じてたのに
突然妙な言葉を投げつけられ、霊夢は眉をひそめて気配がする方を見た。真っ暗な、ここはどこだろうか。頭陀袋の中で司会は奪われていたが距離はさほどでもないだろう、霊夢は高を括る。声の方に視線を投げると、真っ暗の世界を四角く光で刳り抜いたような図、その中に幾人かの影が見える。幻想郷では入手経路が限られる、筒状に巻いた薬草を紙で包んだ煙草を吹かしているやつもいた。真夏の外気の蒸し暑さだけを切り取って封入した上に土黴臭さを充満させた真っ暗な納屋の中に、妖気が残留しているのを、霊夢は微かに感じていた:矢っ張り。
霊夢が声の方に視線を送ると、はっきりとは見えないながらも薄っすらに、声の主の顔が見える;でっぷりと太った男だった、見た目も、悪い。だがどんなに醜い言われる外見の人間であっても、人外や妖怪と幾度も対峙してきた博麗の巫女にとってそれはさほど驚くような外見ではない。そのことに動じる様子はないが、男はどうやら、自分の外見で眉一つ動かさなかった霊夢に対して喜びの気配を浮かべる。
霊夢ちゃん、ボクの顔を見ても平気なんだ……❤処女じゃなくっても、嬉しいよお!
なんなの?
蹴りの一発でもくれてやろうかと足を持ち上げた霊夢だったが、そうして重心をずらそうとしたとき、自分の手が後ろに縛り付けられていることに気付いた。巧く重心を移動できず、体全体を背に転げるようにしてつま先を蹴り上げる;男の顎を強かに打ち上げたが、さしもの博麗の巫女とていきなり人間に向かって本気の健脚を味わわせたりはしなかった。蹴り上げられた男は肉々しい醜体を地面に転がせ、ずん、と音を鳴らすほどだった。
ばかおめ、巫女様の足もらって、不用心すぎだ
横から顔を出した別の男、顎を押さえながら起き上がろうとして脳震盪でふらついている男を嗤うように、今度は彼が霊夢の前に入り込んでくる。さっきの男ほどではないが、お世辞にも見目がいいとは言えない。今度は何かの皮膚病でも患っているのだろうか、赤黒く沈着した色素と、白く角質化した皮膚が肌の大半を覆っている;時折割れた皮膚の間には湿った質感が顔をのぞかせていた。霊夢にとってはそれでも、全く人間らしい姿に違いない。単純に自分をこうして拘束した不届きに苛立ちを顕にすると同時にその内面で、人間が自分に表立って危害を加えるなんてことはないと踏んでいる。鋭いだ目元と、薄ら笑った口元が共存していた;この不敵な表情こそまさに、里の人間達の間にある巫女博麗霊夢への共通認識だ。
博麗の巫女の処女血が万病に効くと聞いたんだ
こいつの母ちゃんが、不治の病だってんだ。八意先生が不治の病だなんて、よっぽどだ
こいつ、とは先のデブのことらしい。皮膚病男は薄ら嗤うように振り返り、下品な笑いを浮かべて起き上がったデブへの視線を促すように、妙な匂いのする煙草の煙を吐いてから霊夢との間を空ける。すると、男が言葉を引き継いだ。
かあちゃんの病を治すためだったらなんだってする、そう言ったら
〝何でも〟と、男はそう言った;周囲の男達もそれに頷いている。だがそれは本心ではないだろう、本心か否かというよりは、正気か否かと言った方がいいかもしれない。そんな荒唐無稽な話、およそこの幻想郷の住人なら信じる筈がない:博麗の巫女の破瓜血などと。
私の血が薬になるだなんて、バカじゃあないの?しかも、処女?生憎私はもう生娘じゃあないわ。そんな大ホラ、誰に仕込まれたの?
誰って、みんな言ってるよな?
みんな?
男達は一同頷いているが、当の博麗霊夢はそんな噂を耳に挟んだこともない、そんな話が流布しているなら彼女の友人である霧雨魔理沙か、あるいはアリス=マーガトロイド、あるいはおせっかいな天狗や鬼が、早々に警告するはずだと、彼女は思っていた。認識か記憶を、何者かに操作されている。そう考えるのが一番辻褄が合うなと巫女は不信感を増す。
そんなわけがないでしょう。でも、私が処女じゃないのが分かったなら、用済みでしょう?さっさと解いて頂戴。生憎私の血は誰の薬にだってなりゃしないわ。
男の言葉を真に受けるのなら、そのとおりだった。博麗霊夢はもう生娘ではない。だが、だからといってそれを非難されるほどに放蕩な性生活を送っているわけではない、むしろ清い体にたった一滴の経験がある故に逆にそれ以上重ねることに臆病になっている;口を開けば不遜さが溢れ出すような態度と裏腹に、博麗霊夢はそんな少女だった。しかも相手は、ついぞこの間派手な喧嘩をしてしまった相手だ:苦々しくも思う。しかし霊夢が処女であろうが売女であろうが、窮極、この男どもにはそんなことは関係がないようだった。
処女じゃなくても、巫女様の血って、少しくらい効果はあるんじゃね?
だな
……はあ?話を聞きなさいアホども、私の血だろうが、誰の血だろうが、人の生き血に薬効なんて無いわ。それと、その煙草、クサいのよ。吸うならまっとうな煙草にしときなさいよ、そんなもん吸ってりゃ、人魚の血だって効きゃあしな、ぐフっ!?
嘲るような諭すような物言いの霊夢の言葉が、妙な気発音とともに途切れた;霊夢の腹部に膝蹴りが入っていた。腹部から突き上げる痛みは、全身に伝播して霊夢の体中を一瞬で萎縮させる。頭から血の気が引いて、視界が薄らいだ。符を持ってきていない、事前に防御呪もかけていない今の巫女は、隙を見て、無符打を宿すか陰陽玉を招来しない限り、多少フィジカルが強靭なだけの何の守りもないただの女だった。
あ、あんた、達、こんなことして
察しが悪いなあ、巫女様
理由なんてぶっちゃけどうでもいいんスよ。処っ血なんて、大して期待もしてねえスよ
オレらただ、霊夢様と、キモチイイこと、したいってだけですから
ハアハア、霊夢ちゃんとセックル……霊夢ちゃんとセックル……!
お前さすがにキモいわ
え、だって霊夢ちゃんだよ!?あの博麗神社のアイドル巫女、霊夢ちゃんを……ああ、勃ってきたっ!霊夢ちゃんの脇乳で何回ヌいたかわかんない、こんな服、絶対誘ってるでしょ、ボクとセックル、誘ってるっしょ?デュフフ……やっと夢が叶うんだ、霊夢ちゃんとセッ
……こほん、まあこういう奴もいるってことだ。こいつほど露骨じゃねえが、里の男達なんてみんなこう思ってるさ。泥まみれの百姓から見れば、博麗の巫女様の体は人の形をした宝石みたいなもんだ、どんなにきれいで、どんなに柔らかくて、どんなに気持ちいいか、ってな。
オレ達と違って育ちのいいその体に、オレ達百姓の生活を少しばかり知ってもらおうってだけだ。巫女様も、いい勉強になるだろう?
結構よ、大体私がいい生活してるなんて勘違いも甚だしいわ。わた、ちょっ、なに、すんのよ
男の一人が小刀を抜いて私の方に向けてくる。よく研がれ、光を強く照り返すほどに鋭く尖ったそれを、私の喉元に添える。
っ
今の巫女様は丸裸だ、知ってるんだぜ。何の庇護も受けてない、何の術も使ってない巫女様は、巫女でも何でもねえ、ただの小娘だ。そうだろう?こうやって、喉をかっきられたら、さぞかし綺麗な血が見られるんだろうなあ
……殺したければどうぞ。私は妖怪を退治は出来るけど、人間には簡単には危害を加えられないの、殺されそうになるなんてことがあれば、話は別だけど。出来るのはせいぜいボコボコにして泣かすくらい。
はあ、霊夢ちゃんやっぱりかっこいい❤
男達の中でも一際気持ちの悪い……熱狂的に霊夢を好いているのらしいデブ男が、破れた肉まんみたいな顔を歪めて笑っている。同じように刃物を手にしていた。
ね、セックルさせてよ、霊夢ちゃん❤占い師さまは、いいって言って下さったんだ❤
先に突きつけられた刃物とは長さが違う、それは牛刀だ。長く同時に暴力性を感じさせ姿と刃渡り。それに男の鋭く座った目は、手に持つ刃物に負けていなかった。冗談や遊びでないことが、霊夢にも伝わる。
霊夢ちゃん、霊夢ちゃんっ!!ハアハア……ハアハア❤
不安定そうなのに妙に座った目付き、光がなくマインドコントロールによって常識を覆されている人間の、目だ。霊夢は察する。マインドコントロールされた人間というのは、刷り込まれた操作内容に従って一見して非常に冷静に動くものだ、それは元の人間の意志と感情を抑圧しているからに他ならないが、この男達は一様に激しい感情を顕わにしている。術者の技量の高さが窺い知れた。術者、それは。
あんた達、誰かに未来を裏綯って貰ったでしょう?
いかにも、占って貰ったよ。よく当たるって噂の易者さ
鼻の奥に絡む妙な匂いの煙草の煙を吐いて、男が言う。その煙草の煙が何をもたらすのか、霊夢は知っている。あまり嗅ぎたくない、こんなシチュエーションでは。そう思っていても納屋の中は密閉されていて、男達が吐き出す煙と匂い、その成分が充満していく。霊夢は自分の肺の中にもその煙が満たされていくのを感じ、効果が出始める前に焦りを覚えていた。
そいつが、あんた達を操ってんのよ。未来が見えるなんてことは、本来あり得ない。それは未来が見えているんじゃない、その通りになる別の未来から無理矢理引き摺り出した因果の血流を不当にこの世界にぶら下げて本来の姿をぶち壊しているのよ、そんな不正な力を濫用すれば、その反動が……
関係ないね。因果だ世界だ、オレ達の生活に何ら関係が無い。オレ達はただ豊かで自由な生活が欲しい、冬に飢えることなく、夏に枯れることなく、病に苦しむことなく、ただ平穏に生きたいだけだ。そんな雲の上で勝手に紡がれてるような都合、オレ達には関係ない
妖怪は依然オレ達人間を恐怖で支配するし、
博麗は妖怪を退治する力を持って、妖怪を支配する。
そうして博麗は、人間を支配するんだ。
それこそ〝不正〟だろう、善人面しやがって!
ち、ちがう……!
私は人間を支配するためにこんなことをしているんじゃない:霊夢は叫ぶ。だが、同時に不安が襲いかかってきた。(私は、人と妖怪のバランスを取るために、紫から……紫から?)
そんなわけがない。私は、妖怪が支配するこの世界の、妖怪側のパワーとして配置された駒なんかでは、ない。霊夢は自分に言い聞かせる、否、言い聞かせる必要もない;博麗の巫女である霊夢は、物心が付いた頃からそう教えられてきたのだ:自分は人間達のために妖怪を抑え利用するための力なのだと。それを、八雲紫から。だが霊夢がそう幾ら口で言っても、彼女を捕らえた男達の耳には届かないようだった。
この世の人間は妖怪に支配されている。直接的にではなく、背後に潜み居てオレ達人間をいつでも食い殺せるのだという普遍的で漠然とした、でも強烈な恐怖によって。博麗神社とその巫女は、人間の味方で妖怪退治をしてくれる善良な人間巫女だが、その実態は妖怪を問答無用に退治する力と、人間の守護者としての立場を利用して、人と妖怪の両方を支配する黒幕だ。妖怪退治の巫女様のその背後に、巨大な妖怪の存在があることをオレ達は知っている。
あんた達、目を覚ましなさい、それは、妖怪の戯れ言よ!騙されては
ハクレイノミコ、お前こそ幻想郷の影の支配者、妖怪と同じいやそれ以上の悪役だ!オレ達はな、博麗の巫女の血が薬になることなんてどうでもいいんだ、そんなのは切っ掛けの一つでしかない。オレ達は、博麗の巫女の命と血を取引材料に、人間をやめる。妖怪や、博麗神社に支配される生活なんて、真っ平御免なんだよ
そんな
霊夢は目の前が暗くなるの感じた。同時に、やはり裏にいるのは、あの裏綯師の男に違いないと、確信した。その物言いはあの易者のそれとそっくりだ、繕いもせず全く同じ思想をひけらかさせるなんて。
支配者なんかじゃない、私は、ただの人間。でも、バランスを取ろうとしていることは認めるわ。人間は窮極、恐怖によってしか制御されない。それを忘れれば直ぐに今のあんた達のようにつけあがり、支配から逃れたいなんて叫んで、でも自分が支配者の立場に立って暴虐不尽を行おうとする。妖怪と恐怖による支配は……人間に必要な檻なのよ。同時に、妖怪もまた、人間が畏怖の対象としていなければ存在できない希薄な存在。どんなに妖怪が強大な力を持ち大暴れしようとも最後の人間一人を食い殺すことは出来ない、自分の精神寄生宿主を殺すことは自分の息の根を止めることになるから。妖怪が人間を極度に虐げすぎないこと、人間が妖怪の恐怖を克服できないこと、その二つのバランスがこの世を平和にする。それは認める、でも、それを利用して支配だなんて、とんでもないわ。
裏綯師にマインドコントロールを受けているのだろう男達は、何も答えない。理解しているのだ、その類い希な占術でこの世の裏側を覗き見、不正な力でその一端を表の世界と結わえ直す、あの異端者は。
妖怪や神霊はともかく、ただの生きた人間で世界の裏側を覗き見するほどの力を持つ者は、その裏側の何者かと多かれ少なかれ接続している。霧雨魔理沙は確かな才能であれほどの力を得たが、それを正当に行使するために魔界と繋がっている。魔界に小さくとも確かにパトロンが存在しても、なお魔理沙は占いを苦手としていた。苦手というのは些か正しくない;その権限を大きく制限されている、と言うべきなのだ。因果の先端を覗き見ることは、正当な手順を踏むのであれば、魔族の権限を持ってしても容易に開示できるものではないのだ。
天津神の大物である稀神サグメでさえ「誓約」と言う形を取り二分の一の確率に絞ることに加えてデメリットまでベットしなければ実行できないし、そもそもやりたがらない。吸血鬼レミリア・スカーレットも「こんなまともじゃない能力を使うくらいなら、自分で努力した方が余程リスクが低いし効果的だ。運命改変なんて、やった後どうなるか分かったものじゃないからな」と言って実行するのを見たことがない。相応の力があり、相応の知識を持ち、相応の覚悟を抱き、その正体を知れば知るほど、高精度あるいは広範囲への〝裏綯い〟は、まともに使えたものではなくなる。それを行使できるほど素の力が大きな存在であれば、無理にそんな不正なアクセスをするよりも、己のまっとうな力を使って結果を引き寄せた方が、余程エコなのだ。
世界の裏側に流れる因果の陰影、その潮流を読み替えて、現実世界に反映させる。〝裏綯い〟とはそういうもの。
裏にパトロンも持たない生きた人間がそれを易々実行出来るだなんて、余程の才能である。本当に極々稀に、そうした人間が現れる。人間の持つこの不確定な可能性こそ、紫やその背後に居る何者か知覚できない「神」とやらがこの世界の主人公に「人間」などという弱い存在を選んだ理由でもある。
人間に害を為さず平和にのみその才覚を使う者がいないでもない、某寺の住職や仙人志望の神霊はそうした例だ。だが殆どの場合、いや必ずと言っていいほど、それはパトロンからの教育や制約がないため力に振り回され、こうして歯止め無く暴れ回る。異端者とはそうした、飼い主の居ない力の暴走そのものを指す異変と言えた:つまり、あの易者である。
裏綯いという不正な力で捩じ曲げて呼び入れた因果は、歪みを溜めて行くの。それはある閾値を超えると破裂して術者を飲み込み関わる因果をめちゃくちゃに破壊するわ。悪いことは言わないから、やめなさい
百万の危惧を逡巡し、その恐ろしさを知っていながら伝わる言葉で伝えられないもどかしさに半ば苛立つように霊夢がそう言うと、しかし男は小さく、くっくっと笑い、そしてようやく答えた。
ふん、高説など要らん。世界のバランスも、因果の平仄も、まったく関係ないことだ。我々人間は、ただ自分達の意志で生きることを願い、そのために正直に真っ直ぐそれを求める。囲い飼われた羊じゃないんだ。何も知らない猿でもない。妖怪が恐ろしいから退けようとする、その首魁があ博麗なら、それにも抗おうとする、それが人間の正直というものだ。もし俺の体がズタズタになったとしても、俺以外の人間が俺のもたらした不正な因果によってより自由の身となるのなら、それでいい。人間には人間の、使い捨ての人形には使い捨ての人形の、プライドとやり方があるんだよ。満たされ切った博麗の巫女様には到底見当も付かない執念かも知れないがな
お前、あいつと……つながって……?
男は霊夢の言うことになどまるで意に介さないと表情で主張しているような、無表情だがどこか不遜な様子で腕を組んだまま彼女を見ている。そんな大層な名分を括り付けてまで、いったい何をしたいというのだ。一人は私と性行為をしたいと言っているが、それが目的?かつて対峙した人間としては最凶のあの存在、その思想、哲学それに、人間達にとってあまりにも甘美な誘いを思い出し、霊夢は身震いする。
止めておくことね、私は人間だけれど、均衡を望む神と妖怪の庇護を受けているわ。比喩ではなく、直接的な方法で。私に危害を加えたなんて知れれば、占いの反動を受ける前に、八つ裂きになって死ぬわよ。あんただけじゃなく、一族郎党全部、消されるわよ。あんたがさっき言ったような犠牲の上に開ける道は、無いわ。何がしたくてこんなことをしているのか分からないけれど、バカなことをしているわ
おおう、人間巫女様がそんなことを言っていいのかね
そこまで言うあんたたちに今更隠し立てする必要もないでしょう。私を手駒に使う一人は、均衡を望むとは言えれっきとした大妖怪よ。お前達みたいな均衡を崩しかねない横暴を見れば、容赦は無い。
そりゃあ楽しみだ!人間の巫女を誑し込んで好き勝手に使える手駒にするなんざ、余程趣味のいい妖怪に違えねえ。腐った性格してやがるぜ
男がそう笑いながら顎で指示する様な仕草をすると、他の男達が私を取り囲むように近寄ってくる。マインドコントロールされた人間と違い、やはり生気がある。ある一人の男、以外は。
はっ。威勢のいいことね。後悔することになるわよ。
その言葉、そっくり返すぜ
目が据わりきっている。それは、霊夢にはどうせ何も出来ないこの立場が覆ることがないという自信によってではないように見えた、ただ、何か覚悟を決めたかのような。その揺らぎのなさに恐怖心、いや不気味さを霊夢は感じていた:それはまるで、あの男のものだったから。
男の小刀が、霊夢に向く。刺すつもりなどないだろうことは想像がついた。それに、刺すのでなく何をするつもりなのかも。
悪いことは言わないわ。今の内にその薄汚い下半身をすっこめておくことね。
すっこめなかったら、どうなるっていうんスかぁ?
挑発して霊夢の顔を覗き込むようにしながら、調子づいた下品な笑みを見せつける男。
人間相手にやるのはあまり気は進まないけれど……少し、痛い目に遭わせないとだめか
男の煽るような視線を弾き返し逆に差し込むような鋭い眼光、霊夢の表情が鬼のそれのように険しく、劇しく、変化した。男達に向けられた表情は憎悪というよりは怒りを持って厳しく訓える神仏のそれ、畏怖を誘いながらもどこかで神々しさを湛え何よりその素体が美しい少女であることが柔らかさと神秘を潜めている。
おっ、巫女様、おっかない顔w
人間相手に、博麗の力なんて振り回すわけにはいかないですよねー?
男たちは余裕を消さないまま、霊夢の前で無礼千万の態度を取り続ける。霊夢が身動きできないのをいいことに、その眼前で舌を出して見せ、剰え霊夢の前髪を掴んで引っ張り上げる。
きれいなオデコだなあ、オレ達百姓とはちげえや!
巫女様の髪の毛で醤油を作ったら高く売れんじゃね?
いーねー!
減らず口を止めもせず、霊夢を馬鹿にし続ける男達。それを睨みつけるようにしながら、霊夢は手近な男の顔に唾を吐きかけて、ついでだとばかりに言葉を投げつける。
私は確かに妖怪退治の特権と力を持ってはいるけれど、それは人妖のバランスを取るためのもの。この力、何も、人間に使ってはいけないなんて決まりは、ないのよ、っ!
なに?
藁数多糾える縄、撚り合い固く結ぶ麻縄。汝等は数多糾える縄、撚り合い固く結ぶ麻縄ではない;汝等は紙である、薄い薄い柔らかく白い紙である、水に濡れ膨れ緩んだ脆い紙の縒りである。その姿を晒し出せ
男が霊夢の言葉の意味を解釈し切らない内に、霊夢の腕を縛り付けていた縄はまるで脆くも千切れて切れた;霊夢の体は見事瞬時に自由の身。何が起こったのかわからない男は、すっくと立ち上がった霊夢の手元を覗き込もうとし、顔面に蹴りを一撃、貰う。
ぶべらっ!
すっこめなかったら、こうなるのよ
霊夢は蹴った男がひっくり返るのを踏みつけて、その向こうにいる男の懐へ滑り込む。体勢を低く、いやまるで前に倒れ込むかのような角度で傾けて、男が咄嗟に避けて引くのも読み含めて距離を殺す。潜り込まれた男は膝を使って霊夢を迎え撃とうとするがそれが悪手、霊夢は進行方向の軸をずらして膝蹴りをかわし、片足立になった残りをしとどに踏み付けた。体重があるとは思えない小柄な少女の足踏みがこれほどの音を鳴らすだろうか。
ぎゃあああっっ!?
倒れ込む男を、そのまま下から肩で持ち上げるように更に深く潜り込む霊夢。霊夢の倍ほどの身長がある大男の体が覆い被さるようになりその中に沈んだ霊夢の体はよく見えない。霊夢が押し潰されしまいそうな質量差だが、男の巨体は霊夢の小さな体に使えられるように依然斜めに残っている。その一瞬の停止の後、男が「うっ」と小さく声を漏らしたかと思うと、全身を弛緩させてまるで空気の抜けた風船のように地面に崩れ落ちた:気を失っている。
私の力が符籙や陰陽玉に依存してると思ったら大間違いよ……思い知りたい!?
崩れた男を横に投げ捨て、足先で蹴り上げてひっくり返して確かに喪神していると確認した霊夢;次の男に視線をくれて凄むと、睨みつけられた比較的小柄な男は、その圧に怯んで足を竦ませた。
妖怪と同程度に害をなす人間なんて〝均衡〟に抵触するわ;あんた達みたいなの相手にはね、力の行使の大義名分なんて、どうにでもなるのよ。……死なないだけ運が良かったと思いなさい。
さっきの、効いたわよ;キッチリ礼はさせてもらうわ。あんた達みたいな人間なんて害妖同然;〝均衡〟に抵触するわ。力の行使の大義名分なんて、どうにでもなるのよ。
立ち竦む男に一歩一歩と躙り寄り、まるで手袋でも履くように左手の指で右手の甲や指の股をなぞるのを男の視界に押し入れる。左手で輪郭をなぞり表面を撫でる右手を一度握り、今度はスラリと揃えた人差し指と中指を立てる。今の霊夢には霊具も装備もないが、それでも立った指二本には、見るだけでも身の毛もよだつ不吉の気配をぬらつかせた青白い光の膜が生える;それは脈打つように動き、沸き立つように泡を弾けさせ、光の霧を纏った。暗かった納屋の中がその青い光の粒の流れにさらされて、十分な光量を得る。霊夢からは男たちの姿がよく見えたし、男たちからは博麗の巫女の無慈悲な表情がよく見えた。
な、なにを
イ・イ・コ・トよ❤
白い歯を覗かせてニッコリと笑う霊夢の口元、だが黒い瞳は光を吸い込むよう、瞼はすとんと半ば落ち、その黒い瞳は三白眼に覗いていた。顰められた眉間に皺は深く、落ち窪んだようにさえ見える瞼の奥の瞳は男を視線で射殺さんばかり。隣の男、倒れている男、奥にいる男、扉の付近にいる男、他にもその納屋の中にいる男全員を、べろり、と、肉食獣が舐めるように見回す。
ひ
扉の付近にいた男が逃げ出そうとしたのを、霊夢はまるで普通に手が届くかのように手を伸ばし、肩を掴むような仕草をする:その手は青白い光霧を纏ったままだ。どう見ても距離は及んでいない、霊夢の手は空中を掴んでいるようにしか見えないし、そこに逃げ出そうとした男の持ち物一つだって触れていない。だのに、男は振り返っただけの状態から身動きできずに、逃げ出す足を止めていた。
な、なんだ、これ、動かねえ……!
これからイイコトしてあげようっていうのに、逃げることないでしょう?
まるで肩が何者かに掴まれているように空中に固定されていて、全身の動きが肩に止められたように滑稽にもがいている:パントマイム芸なら佳境、投げ銭を放るタイミングだろう。だが生憎、彼の方はそこに本当に固定されていた。掴んでいるのは、納屋の真ん中で威圧的な表情を浮かべる博麗の巫女、その青白く揺れる手だった。
それとも、博麗の巫女からのバチをそんなに恐れるような、ことをしたのかしら!?
なんて神通力だ、これじゃ
よ、妖怪と変わりねえ……!
怯え上がる男たちを前に、足元に魔法円を揺らめかせながら男たちを睥睨するように見回す霊夢。青光纏う右手の指をぱちんと鳴らすと、その姿がぷつんと途切れるように消える。次の瞬間その姿は納屋の扉と男達の間に現れた。その評定と気配は言外に言っている:逃さない、と。
はあ?〝妖怪と変わりない?〟バカいってんじゃないわよ、人聞きの悪い。私はね、妖怪を退治するために、妖怪を超える存在としてつくられた存在なのよ;同じにされるなんて……腹に据えかねるわね?
霊夢は再び青光の霧を纏わせる手の指を立て、その先端で空中に何かをなぞる。指先の踊る軌跡には、闇夜で手持ち花火を勢いよく振り回したときのような光の帯が残っている;まるで空気に青い紋を書いているよう。瞬く間に紡ぎ出される指先の紋様は、幻想郷の言葉とも、命蓮寺の尼僧が扱う梵字とも、あるいは霧雨魔理沙の扱う呪文とも異なる;恐らく、博麗神社にだけ伝わる神祇紋だ。
確かに人は妖怪にはなれないけれど、同等のものと見做すことは、ままあることだわ。その結果、人間を退治することだって、ない訳じゃない。あんた達みたいなのはね。悪い子には、お仕置きが必要だわ。
博麗社外不出の祝詞は宙に青白い光の軌跡を残しそれは、普段妖怪退治をする時には符籙として使用する札にかかれた印と同じようなものになる。指先で、おそらく最後の一筆を書き足したとき、それらの軌跡が一層に光を増して輝いた。今や納屋の中は外よりも目映い。
別にただのニンゲン相手にこんなものを使う必要はないんだけど。まあ、見せしめ、かしらね。よくその目と耳と、身に刻みなさい。幻想郷の〝均衡〟と、その守護者に害をなすものが、どういう末路を辿るのか。
少女の表情とは思えない、凍り付くような眼差しで男を見る霊夢、その末尾に一言付け足した:一人くらい、死なせてしまっても、仕方ないわよね?
そうさ、逃げなくたっていいだろう?博麗の巫女
……悪いけど私、こいつらといいところなの;邪魔しないでれるかしら
なに、仲間に入れてもらおうっていうんだ、構わねえだろう?
霊夢が振り返り、背後の扉を開いて入ってきた何者かを確認する。ただの人間相手に、術式モードの霊夢がいち振り返ってそれを視界に捉えるなど、不可解なことだった;それは霊夢がその何者かに、普通のニンゲンとは異なる何かを感じ、危険を察したからに他ならない。
おまえ……
霊夢の反応に、立ち入ってきた男は何も返したりはしなかった。霊夢の横を、まるで博麗の巫女など取るに足らないというように、ただ、すう、と通り抜け、部屋の中へ進む。納屋を見渡して、納得したように小さくうなずいている、そして言った:篭に入ったな。
なに、これ?
何の備えもなく博麗の巫女を拐かすわけがないだろう:お前の立場とやり口は、一度経験している
備え……
男の反応を訝しみ、改めて視線を巡らせる霊夢:違和感。納屋の中を満たす術式の光霧、一方でその光を拒絶するかのように暗い闇色を滞らせている箇所が並んでいるのが見えた。そこは光に対して影になっているわけではない、光が直接差し込んでいるというのに光を受け付けていないその奇妙な空間は、霊夢の術印から発せられる青白い光を拒絶するか、あるいは吸い込んでどこかに捨ててしまっているかのように、ぽっかりと闇色を残していた。納屋の中が光で満たされることで、その闇色が納屋の壁に点々と一定間隔に並んでいるのが如実となっている。
その〝暗いところ〟からは、まるで本当に底に穴でも空いているかのように、なにか黒いものが流れ出している。どろりと黏稠な質感、表面には鈍い光沢を持ちながら、ぷつと何かを小さく泡立たせ続ける黒い何かが、ちょうど人の頭くらいの大きさの雫を膨らませ、尾を引いて床へ流れていく。泡立ちが小さく表面で割れると、その内側からは赤い液体がじわりと溢れ出すが、空気に触れるとじり黒く変色して元の黏稠な黒液に同化する。そのたびに、赤ん坊が泣く声のような音を遠く聞くような気がした。その〝出血するコールタール〟は床に到達してもひとりでに動き回るのである、そうしてその黒が霊夢の術式の放つ霧光、あるいはその下である神祇紋の軌跡に触れると、光も軌跡も、まるで電圧を失ったネオン管のように光を消してしまう。
こいつがあんた達になんて言って近付いたのかは知らないけど、こいつは占い師なんかじゃない、ニンゲンでもない。妖怪よりも質が悪い、〝人妖〟よ!
知ってるよ
ああ。この妖怪は、オレたちと利害を一致させている。協力者ってわけだ
〝利害の一致〟?バカね、こいつにまんまと誑かされているだけよ。
バカね、と口にしたその裏腹に、霊夢は驚愕し、そして落胆していた。人と妖怪が、悪事において協業するなんて。妖怪の悪性を人間の悪性が利用し、互いに高め合うようであればそれは、妖怪ばかりを退治していても均衡が保てないということだ。妖怪は、人間にとって触れてはならない悪然たる脅威、もしくは時折気紛れに恵みをもたらすこともある超越的存在、その渾然でなくてはならない。幻想郷においては、根源的な種族が「悪魔」であっても、それに通じる「魔女」であっても、広義的には妖怪として扱われる;それは、人間を誑かし悪意に堕落せしめる存在として悪魔と、この幻想郷でそれなりの役割を演じながら生きる悪魔を、異なるものとして博麗神社がルーリングしたからだ。蓋し、それ故に後者の悪魔は、妖怪に組み入れられている。
そうした「悪魔ではない妖怪」を特別して言うなら、この世界では「神妖」と呼ぶ。神妖はまた、世界の創造者、恵と導きによって支配的な立場に立つ者、悪魔と対立する存在としての意味での「神」からは区別される。言ってしまえば神も悪魔もこの幻想郷では広義には妖怪である;言い分けるならば神妖であるというだけだ。人間が妖怪になることは禁忌だが、それは実際のところ人間向けの表向きのルールでしかない。そもそも神は人間であるし、人間から堕落した悪魔などごまんといる、それを招き込んでこの幻想郷は「妖怪」と絡げているのだ;ならばそれらはすべて禁忌になる筈である。それでもそうならないのは、単に、博麗かあるいは八雲が、近年では紅魔の吸血鬼が取捨して許容し「妖怪」として存続させているからに他ならない。認められなかった入国者は、ただの人間としての生を得る。
だが、この人妖は、生粋この幻想郷で生まれた人間が現存在である;その前提に立つ〝人妖〟とは、許容できない悪性その具現として最たる例となる。人間が身近な悪意の道具として妖怪を感じること、つまり妖怪が「神妖ではない悪魔」としての存在に変わってしまうことは、博麗にとって、この幻想郷にとって、非常に都合が悪い。それは防ぎたいことであるが同時に、そうした「悪魔は利用しうる悪だ」と見做す悪性に染まる人間がいることを霊夢は悲しく思ったし、危機的にも思った。だからこそ、博麗の立場としては、認められない。
でも、そう。それならあんた達全員を同罪で裁けるわね、都合がいいわ。ウチの決まりではね、そういう人間は、容赦しちゃいけないことになっているの。悪く思わないでね
〝出血するコールタール〟は巨大なナメクジのように這いずっている、泡立ち赤い液体を流す表面には、今や赤ん坊の顔のようなものが幾つも浮かび上がっていた。這い周り移動するたびに、内側から突き出すように小さな人の手のような形をした真っ赤な塊が突き出し、同じようにすぐに黒く変色して元の中に取り込まれる。それを無間に繰り返しながら地面を動き回っている。
人妖の存在を認め、霊夢は警戒心を増しその術式をより強力なものに切り替えようとする:まずは、陰陽玉を手元に。
來!
霊夢が陰陽玉を遠隔召喚しようとしたとき、人の声ならぬ音が割り込んだ。猿の声と赤ん坊の鳴き声を圧縮したものに地響きの重苦しさを被せて反響させたような、この納屋に響くにはあまりにも不自然な音。右手を上げその先に陰陽玉を待ち掴むような霊夢の姿勢に向けて、出血するコールタールは、その表面にある無数の赤子の顔の、まるで口のような形に落ち窪んだ部分を、一斉に大きく広げていた。
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「■■■■」
「■■■■」
「■■■■」
「■■■■」
「■■■■」
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「■■■■」
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びし、という陶器に罅が入るような音が空間中に広がる。次の瞬間、霊夢の描き出していた全ての紋が弱々しく明滅して、ネオン管がひび割れ砕けるように消えた。手の先に出現していた、陰陽玉召喚のための亜空穴は、口こそ開いたもののその入口にクモの巣状に貼り付いた黒い何某かによって塞がれており、超常的な霊珠であるにも拘らず陰陽玉はそれを通り抜けられずに霊夢の手の中に収まることができない。亜空穴はそのまま持続時間を消費し塞がってしまう。
なっ……!?そんな!
扉の前にいきなり移動したのも、そうしてアイテムを召喚しようとしたのも、空間に穴をあけるなどというバケモノの力だ。お前はあのとき、自らを〝人間巫女〟と言ったが、それは本当なのか?妖怪の庇護を受けその力を行使する、お前は矢張り妖怪巫女に違いないだろう!人間を欺き人間を支配する妖怪の手先!
違う、私は……!
霊夢は、突然に圧倒的不利に立たされたことを悟った。異変級の妖怪〝人妖〟の罠に、丸腰で入り込んでしまった;そう思ったが、もう何もかもが遅い。なんとかこの窮地を脱する手段を考えなければ。こいつは他の力を持った妖怪と違い、対話に応じる〝あそび〟を持ち合わせていない。怨霊としての聞き分けのなさを、強力な妖怪並の知性とその力を以て振り回す、厄介極まりない危険な存在だ。
だが安心しろ。お前が妖怪の手先ならば、それは俺と敵対するものではない;俺は妖怪側に立ちたいんだ:人間を支配する側に。楽園の面をして歪な支配体制に欺く、その〝仕組み〟の側に入りたいんだ。ただ、恐怖がその唯一の道具である必要はないと考えている。それさえ除けば、お前と一緒だよ、ハクレイノミコ?
黙れ!お前のその哲学は、幻想郷的ではないわ!
この世界に、狭義の〝神〟は、いらない。そうだな、この間ここに来たあの三位一体は、その神性を捨ててまでここに残ろうとした。神が?自尊心を毀損されて?それでもこの血にすがるのは、そうだ:それでも支配的立場に変わりはないからだ。そうだろう。妖怪。
はき違えているわ、それは、歪んだ見方よ
だったら否定してみせろ。妖怪が恐怖を納税しなければいけないのは何故だ?何故人間が税の源泉であり続けなければならない?それはルールだからだ、誰が決めた、博麗だろう?ハクレイは初めから妖怪を〝収穫側〟として、人間を〝田畑〟に設定したんだ:作物は、恐怖。こんなものが〝平等〟なものか。だが、実際にはうまく機能しているよ、欺瞞のもとでな。
それが……決まりだからよ。決めたのは、私じゃない
ならば、誰だ
ゆかり、という三文字が霊夢の脳裏をよぎる、だがその転嫁はあまりにも、さもしいそれに、今までの自分をすべて否定することになる。
ルールを問うても、意味なんてないわ
意味がない:その通りだ、博麗の巫女。ルールが住人を虐げるなら、住人はそれを破棄する。―破壊しろ
はかいしろ:人妖は、霊夢に完膚無きまでに叩きのめされ、ひっくり返り、伸び、倒れ、怯え上がる男達に向かって言う。誰かからそれをやり返せと一言で指示されたところで到底それを為せるとは思えないし、彼等がその言葉に従う道理などない。幾ら人妖からの命令とて所詮は人間一絡げ、霊夢にとって今更脅威でもなんでもない。ひと打ちひと蹴りひと払い再び浴びせればまた無様を晒し重ねるだろう、男の数は五。余裕だ、あの男以外は;霊夢は高を括った。
はっ。こいつらに何が―
男共は立ち上がらない、そう踏んだ霊夢の予想と裏腹に、男達はまるで出来の悪い傀儡人形が、ミスを慌てた繰り手の稚拙で吊り上がる時みたいに、歪な動きで立ち上がった;重心の位置も力点の場所も、何もかも理に反している。呼吸のリズムも心の臓の拍も関係ない、だがカクと刻んだような痙攣を同居させた歩みで霊夢ににじり寄ってくる。目に光は……あった;体の動きは本来的ではないにも拘らず、瞳の中に自我の色はたしかに残ったままだった。傀儡術でも摑靈術でもない;こいつらは、自我の下であの人妖に体を差し渡しているのらしい。
幻想郷の人間が、そこまで……残念だわ……!
陰陽玉がなくても:霊夢は苦い表情で男達を警め睨み威圧しながら、呼吸を整える。すう、と抜けるような吐息の音が不自然に大きく響いて、彼女の両の手に光が集まり始める。
やれ。人妖が、何れかに対して命じた。複数の悪意が、霊夢の周囲で同時に弾ける。刹那、霊夢もまた呼応して力を、放った。
いきなり無敵回避で悪いわ、ねっ!
白く眩い光、だが破壊的というわけではない、彼女を守るように突然全方向へ吹き出す圧い光の奔流が、その全てそ一時的に吹き飛ばす!
霊撃とはそうしたものだった、はずだが。
えっ?
霊撃の発動においては光圧の噴出と同時に彼女自身の体も小さく浮き上がる、霊夢は周囲の悪性を吹き飛ばすのと同時に、生じた上昇モメントを飛翔に乗じて、怪我を承知で納屋の壁か、天井かを突き破ってここを脱出するつもりだった。
だがたったこの瞬間、そうはなっていない。光の奔流は生じたが、男も、まして人妖も、それどころか地べたに敷かれた藁一本さえも、動いてはいなかった。生じたのは、ただの光、だけ。上昇モメントも生じておらず、展開予約してあった飛翔術もトリガされずに立ち消えている;霊夢の足はしっかりと地面を踏みしめたままだった。
ど、どううして―きゃっ!
飛翔術の手動リテイクによる発動遅れが致命傷になった、男の一人の手が、霊夢の足を掴む。
まずいッ
足を掴んだその手を、霊夢は身を翻して捻って怯ませ、そのまま蹴りを叩き込む。バランスが崩れたところに次の男、体勢を崩しながらもその腕を逃れ、そのまま飛び抜けようとした眼前に広がったのは。
全き無光の中に鈍く赤色がてん、、と斑する空間;霊夢自身の魔力光も、その中では反射を見ない、どこかに吸い込まれるように消えている。
っ!?
霊夢の飛翔する前面に、粘菌が胞子体をなすようにひょろ伸びてその先端を宇宙ニューロンの形に指広げた、〝出血するコールタール〟がはだかっていたのだ。
霊夢はその中に、突っ込んでしまう。
しまっ…………んぶっっ!?
〝出血するコールタール〟の触肢に絡め取られるように、霊夢は地べたに叩き落された。
っぐう、んぶ
黏稠な黒い滴りに激突し、更に地面に広がり始めていたその上に体を落とし、霊夢の体中にその黒い粘り気が絡みついていた。ゲル状に粘るそれは各箇所が石を持ったように蠢いて自律的に霊夢の体に広がっていく。体を這い回るだけではなく目や耳、口といった穴に入り込もうとしてきていた。
脱出、しなきゃ
霊夢はすぐさま体制を整えようとするが、黒い粘体は想像以上に、重かった。絡みつかれた箇所は自由を奪われまともに動かせない。まるで取り餅のようだ。強い重力に逆らうようにようやく立ち上がる頃には、男達の手は、全員分もれなくすっかりと、霊夢に届いてしまう。
ちっ
れいむちゅゎぁん❤
は、離しなさいっ!
霊夢は歯噛みし先の霊撃が不発した理由を心中探りながら、一人の把持を捻り上げるように掴み返して足を入れ釣り込む;抵抗する男が体重を移動する瞬間のゆらぎを狙って、霊夢は更に男の上体を起こして引き寄せ、そのまま男の体を地面に叩きつける。〝出血するコールタール〟の張力した界面に倒れ込んだ男だが、単に投げられただけにも拘わらず酷い苦悶の表情を浮かべる。
体中の脈に妖気が張り巡らされた体では、私の投げはさぞ痛いでしょう?
霊夢は強がってみせる。だが、〝出血するコールタール〟が霊夢の体にかけている負担は想像以上のものだった、何よりその黒い塊に取り憑かれた今の霊夢は。
術が、出てこない……それに、重い……
体術で二度に渡って男を打倒したことに間違いはないが、その実、術が発動せずに物理攻撃に訴えるしかなかったのだ。霊夢の右手、左手、額、胸、いずれも揺らめく光霧をわずかに顕してはすぐに消えるを繰り返し、術の体をなしていない。加えて、出血するコールタールに絡みつかれた体は、強烈な重力を受けたように重い;男を投げただけだと言うのに霊夢は途方も無い疲労感に襲われていた。身動きが、段々、取れなくなっていく。
まずい、まずいまずいまずい……
黒い粘体を振り落とそうとするも体からは容易に剥がれ落ちない;その間も男が、それに新たな黒が霊夢の体に取り付いてくる。操られた人間の体ならなんとか振り払えているが、その間にも出血するコールタールの粘りが体に張り付いて体を重たくしていく。泡立ち吹き出す赤い汁が強烈な生臭い匂いを漂わせている。男達がすっていた妙な匂いのタバコの匂いと相まって、頭の奥がジリ錆びていくのを感じた。
どうした博麗の巫女?嫌がる仕草が鈍くなってきているじゃないか、彼らの相手をするつもりになったのか
どうしてもって言うなら、考えないこともない、わ
どうしても!
相変わらず緊張感のないデブ大男がすかさずしょうのない答えを返す。
だったら、土下座して私を拝み倒しなさい
霊夢ちゃん……自分の置かれた立場を考えた方がいいよ
あんたらのオタサーの姫にでもなれっての?
そうだよお❤そのために、占い師さんに、ボクがお願いしたんだから!
デブ男がいよいよ霊夢に飛びかかる、黒い魔法生物に手足を絡め取られて限界不自由に陥っている霊夢はついにいなし切れずにその体を受け止めてしまう;巨漢の体当たりを食らって黒い池の上に倒れ込み、出血するコールタールの拘束は致命的なものになった。霊夢から自由が失われる。腕をあげようとするだけでまるで巨岩を持ち上げる程に重く、立ち上がろうと足をつくだけで山を背負うほどの重圧。神をその身に降ろす事ができる博麗の巫女が、仮にそれをこの場でなせるのならそれも平気だっただろうが今の彼女にはそれもできない。仰向けに打ち倒れた霊夢の細躯は今やただの人間の少女のそれ、〝出血するコールタール〟の赤濡れた黒い触肢の他に、四方八方から伸びてきた手を受け入れてしまう。
やめ、やめなさい!
うるせえ、動くと怪我するぜ
っ
男の一人が取り出して〝いい加減におとなしくしろ〟と鼻先に向けられた刃;さすがの霊夢も顎を上げるようにそれを避ける。そうだおとなしくしていろ:と小さく吐きかけて、男はその切っ先を彼女の肉体ではなく衣服へとあてる。普段の霊夢であればただの人間の持つただの刃物など意に介さないが、状況はそうではない;いかに博麗の巫女が戦闘神官の側面を兼ねるとはいえ仮にも人間の容れ物に強大な力を詰め込んだだけの存在だ、対応なしに刃物を刃物として受け止めて無傷でいられるわけではない。そして、今は対応が出来かねる状況だった。
どう、する気?脅してたって
そりゃあ決まってらい
憎々しげに刃物の切っ先を見る、口惜しくて男の顔などまともに見られるわけがなかった。そうしている内にその切っ先はすると霊夢の襟から胸元を撫で、ちょうど膨らみがすぼまる辺りまで降りていく。そして、引っ掻き上げるように彼女の服の布地に先端を持ち上げた。
下劣ね
負け惜しみに近い霊夢の反応を、男は無視した。先端が布地をわずかに貫いている。胸の膨らみを掬い上げるように刃物を圧すと、その切れ込みをそのまま押し広げられるようにして、刃物の先端は霊夢の装束を裂いていく。刃の胴辺りまでが布地を貫く頃には巫女装束の袷襟に切れ込みが及んでいる;裂けた間からは、彼女の胸を無理やり押し潰して衣服の中に押し込めるための白いサラシが覗いていた。ザク、ザク、と男の小刀は、更に博麗の祭衣を切っていく;布地を切られて袷が開き、胸に巻かれたサラシまで及んだ刃はそれもろとも縦にざっくりと切り裂いていく。幾重にか巻き重ねられたサラシはそれだけで切れ落ちることはなく、霊夢はすぐに乳房を晒すことにはならなかった;だが男は、すぐにそれを剥ぎ取る。当然だ、それが、目的なのだから。小刀をもう捨て去り、べり、とまどろっこしそうに装束の上半分とサラシを力任せに破り捨てた男は、言葉を失うように霊夢の胸に視線を突き刺している。
おお、こりゃあ……
「赤飯」の辺りから確かに膨らんでいた乳房だったが、去年くらい(彼女の記憶では多分……最初のセックスをしたくらいからだ)から急に大きくなり始めている。サラシで押さえつけるのもとうに苦しくて、胸というよりも乳房の膨らみに布を巻いて形を強調するような形になっていることが、霊夢にとってそれはひどく恥ずかしいことに思えていた。他の女性の大きな乳房を見ても何とも思わなかったが、自分の乳房が揺れるほど大きくなったことを自覚するのは、なんだか自分がひどく淫らで不道徳な存在に変化してしまったような気がして。
……巫女様、こいつを隠しておくとは、不誠実ってもんですぜ
すっげえ乳だ……体とバランス取れてねえだろ、エロすぎ
くっ、み、見ないで、よ!
育ちすぎた乳房はサラシを巻きサポートしないとだらしなく形を崩して垂れ下がる。搗きたての餅のように柔らかくしかししっかり上向く張りを保った、体積のある肉袋は、厚みを保ち圧倒的な肉感を有して、脈打つように揺れるのだ。それを見た男は霊夢の両手を頭の上で拘束する;その姿勢では、乳房の垂れ揺れを止めることが出来ないどころか、強調させて見せつける形になってしまい、博麗の巫女は顔を真赤にして男たちから視線を剥ぎ取る。
えっろ、なんだこの乳。赤ん坊もいないのにこんなボリュームんなるか普通?
ガキがいたってこんなアンバランスな乳肉育たねえよ、むしろ男に揉まれるためについてるみたいなもんだ、淫乱乳巫女さんよ
霊夢ちゃん……っ❤すっごい、おっぱい……❤
勝手なこと、言ってんじゃないわよ!好きでこんな胸になったわけじゃないわ!離しなさいっ!
制止の言葉など役に立たないことは承知だが、やめてと言わずにはいられなかった。そして言ったところで何も変わることもなかった。早々にスカートを破り取られてぱんつ一枚になった霊夢、その最後の布地を男は刃物で付近の肌を撫でるようにしてから切り裂いて剥がした。あんなに薄い布一枚だというのに、それが剥ぎ取られたときの無防備感と不安感に、霊夢の白い肌が粟立った。何も覆うものがなくなった陰部に向けて、男達の視線が突き刺さっている;それを、まるで物理的な刺激のようにじりじりと感じてしまう霊夢。
み、る、なっ
服を剥ぎ取られ裸になった霊夢の脚を無理矢理開かせようとする男に対し、足をばたつかせ、あるいは相手を蹴って抵抗するが、抵抗が続いたのはわずか十数秒程;手を繋ぎ留められた私に出来る抵抗など高が知れていた、あっという間に足首を掴まれ、無理矢理に開脚させられる。太股を閉じようとしたが体を間に挟み込まれてそれもかなわなかった。霊夢の極上のかんばせ、シルクじみた白い肌、いやらしすぎる乳肉と、男たちが想像もしていなかった使い込まれた淫裂、作りものでなければ納得のできない極上の全裸が、男たちの前に晒し出される。男たちの興奮は一気に高まり、呼吸の音が暗い納屋の中に低く響き始めた。
男達の前に晒される陰部。事もあろうに男は後ろに回り左右から脚を後ろへ拘束し直してそこを大きく晒し上げる。周囲に群がった有象無象の男達、一人として霊夢が名前も知らぬ彼らはしかし、全員が霊夢の名前を知っていて、全員が霊夢のあそこを獣のような目で見ている。欲情でじめっと濡れた臭い息が、周囲の空気を汚し、熱くしていく。近くにいる者については股間が膨らんでいるのも、霊夢からは見て取れた。
へえ、巫女様のここは案外毛深いんだな
ちがうって、巫女様は純でウブだからそういう配慮に逆に疎いんだって。ほら、ただぼーぼー生え放題になってるだけだ。まんこ自体は綺麗……
さ、触るな、触るな!この……
マン毛までつやつやの綺麗な黒髪だ、すげえ。流石にマン毛じゃ頭よりは剛毛だけど、おおー、俺のと違ってすっげえ触り心地いいわw
さ、さわんないで!やめてったら!!
お手入れが疎かだからわっさわさだけど、これだけ綺麗なマン毛ならこれはこれでアリだな。おほっ、マン毛のくせにふわふわしてやがる。ずっとさわっててーわw
こんな男達相手に毛の処理をしていなかったことを悔やむなんて、霊夢は思ってもいなかった。恥ずかしい、素直に表現するならその通りだったが、屈辱の方が圧倒的に上回っている。男達の言う「百姓と巫女」の格差を肯定することになってしまうが、心のどこかに「ただの人間のくせに」と思っている節があった。「百姓と巫女」?博麗の巫女はこの「ただの人間のくせに」の言葉を、巫女として感じている。それを自覚した霊夢は、生唾を飲み込んでしまう:私は妖怪の立場に立って、いないか?
私は人間巫女だ。だが、それを立てたのは、妖怪中の妖怪、八雲紫なのだ。私に、妖怪の息がかかっていないだなどとは、楽観が過ぎやしないか……?そう考えて霊夢はぞっと身震いした。そして霊夢は、その身震いは正しかったのだと、すぐに思い知らされることになる。
男の手で衣服を剥ぎ取られ、品性下劣な視線で体を観察され、霊夢は〝女性として汚されるのだ〟と考えていた。既に彼女もセックスを経験している、その初回は痛みこそあったが幸運にもロマンティックなもので、思い出だけを語るのならいい思い出であるし、相手とは恋仲を続けている。その延長の、略奪するような性行為を強いられるのだと、痛みは覚悟していた、好きでもない相手のペニスを受け入れるのかもしれないと、考えていた。それでも相手の性欲を満足させれば、気が済めば、終わるのだと。人妖であっても考えることは人間のままなのだと。
……ヤりたいなら、さっさと済ませたらどう?
だが、その考えは、甘かった。
納屋に響くその音は、爆竹の1本を取り外して着火した破裂音のよう。それも、スパンこそ長いが、爆竹のように連続して鳴り響いていた。
ッパァン!
やめなさ、い……っっっ!!
バシッッッ!!
ッバン!!
いた、いっ!ほんとに、やめないと、後悔するわよ……!
逐一鼓膜にびりりと響く強烈な破裂音の間に、時折交じる人の声があった;霊夢の声だ。
ッバンッッッ!!
うっ、あ……おまえ、っ!
スパアァン!!!
ヒぐぅっっ!!
おうおう、熟れた桃みたいになってきたぜ。いいカンジなんじゃねえの?
なに、が……
バしぃっっっ!!
んぎ、あっ!どうせそこの人妖は用が済んだらお前たちのことなんか知ったことじゃないわ、そうしたら、このことを、断罪してや……あぐぅっっ!
人の肌を叩く音には到底聞こえなかった;人の肌から発生するには、余りにも、鋭く、大きく、破裂じみている。だが破裂音の正体は、まさしくそれであった:男が霊夢の尻を叩く音である。男の手には何か手袋のようなものが嵌められていた。表面は滑らかで、それが霊夢の尻肉を打ち付ける度に小さく水飛沫が飛ぶ。内側には柔らかに起毛しており、その衝撃を男の手の方へはすっかり吸収してしまうらしい;それは、濡らした牛皮の表面と防水した内部に緩衝材を設けた、打ち付け用のグローブだった。表面にわずかに水を含ませることで打ち付けたときの衝撃を強めているらしかった。
あー、締まるわー❤
やめ、……っ!!んあっ!!!
バシイッッッ!!
い、あっっ……こ、殺してあげるわ、これが、おわった、らぁっっっ!!!
四つん這いの姿勢を強いられ、床についた手と膝から下は黒い粘体に包み込まれて引き抜こうにもびくともしない。股は大きく開かれて、男の腰を間に受け入れていた。勃起した加熱肉棒が、処女を喪失したばかりの淫裂を容赦なく蹂躙している、溢れ濡れる愛液は本気汁などではなく、防衛機能としてのそれに過ぎない。だが無残に押し広げられた小さな穴から、防御機能の愛液に混じって、白い液体が糸を引いて垂れ滴っている;男は既に、霊夢の中に何度か精液を放っているようだった。当然霊夢に感じている様子はないし、事実こんな男相手にペニスをねじ込まれて感じるはずがない;何より、休む暇もなく打ち付けられる尻への殴打は苛烈で、霊夢の白く滑らかだった丸尻は今や、右も左も真っ赤に腫れ上がって熱を持ち、右の尻肉には一部皮膚が裂けた痛々しい傷が見えていた。セックスのときに被虐趣味を以て少々大きな音を鳴らすように痛みを抑えて尻を叩く、そんな生易しいものではない。これはまるで罪人への刑罰の如く容赦のない尻叩きだった。
バアンッ!
うギぃっっっ!!いダ、いっっっ!!
霊夢ちゃんさあ、もしかして俺たちに対して〝きっとこの非モテブサ男達、かわいいかわいい楽園の巫女である博麗霊夢に叶わぬ肉欲を抱いていて、それを晴らすためにこんなことしてるんだ〟とか思ってたんじゃないだろうね?ぜんっぜん違うからね?
ちっ、ちが……そんなんぎゃあああっ!!!!
ずばぁあんっ!!バシぃっっ!!!ビシィッッッ!
お……っぐ……、いた、い、お尻、壊れ……ちゃ……
あー、でも、博麗の巫女がケツ叩きで泣いてるの、超コーフンするわ。出すぜ、真っ赤に腫れて裂けて血でてる尻タブに、ザーメン擦り込んでやるよ
やめな……さいっ、やめなさいいっ!!
博麗霊夢の想定は大きく狂っていた;男達はきっと自分の女としての体を目的にしていて、人妖の方は妖怪としての転生を完了させたいとこの人間達に時間稼ぎをさせているだけだと思っていたからだ:だが実際には全く違った。彼らの目的は。
びちっ!びしゅっっ!!!ぶちゅんっっ!!!
あ……ぎ……っ
強烈な音を鳴らす、それに相応な力で殴り続けられる霊夢の尻は、徐々に皮膚が破れた出血で無残な姿に変わってきた。男達はそれを見ても眉一つ顰めない、それどころか指差して笑いながらはしゃいでいた。そう、霊夢を性的な玩具として扱うことは、彼等にとっては大した目的ではない;それはこうして霊夢の体を弄び虐げ嘲う副産物としての価値しか持たないのだ。
彼等の目的は、先に、占い師の男が口にしたことだった:はかいしろ。
出すぞ、クソ巫女
どぶっんびゅるっびゅっっ
男が後ろめたさのかけらも持たない様子で、鞭打たれて赤く腫れ皮膚が破れて出血する尻肉の上に精液をかけ散らした。ひび割れ肉が覗く隙間に男の精液が流れ込んで、元はなだらかで綺麗な曲線を描いていた肌の上に、凹凸な紅白マーブルを作り出していた。真新しい裂けた目を広げた肉に汚らわしい白濁液が流れ込むと、神経に直接滲みるような激痛が霊夢を襲った。
いっ……あ……おぼえて、おきなさい、妖怪に与した、ニンゲンっ……
あーわすれらんないなー❤博麗の巫女が尻を腫らして泣きべそで〝おぼえてらっしゃい〟だってよ!
巫女って……処女じゃなくていいんだ……処女じゃなくて……クソビッチ巫女……!
へへへ……どうでもいいわ、博麗の巫女をいたぶれるなんて、澄ましっ面でオレたちを見下してた博麗の巫女をいたぶるの、毎晩想像してたからな……フヒヒ!
見下してなんて、私、ニンゲンの味方よ、人間巫女……
さっき!〝ぶち殺してやるこのニンゲン〟っていってたじゃねーかよ、妖怪女
し、してないわ、そんな言い方……あっぐ!!!
もう一つ、一際大きな破裂音。肉が裂け精液で濡れた尻局面をまた一発、男は強烈にブッた。異物が流れ込んだ傷口が、余計に尻打ちの痛みを増幅させる。痺れるのを通り越して焼けるような激痛が、尻肉全体から頭の中に雪崩込んできた;痛みへの反応と恐怖で正常な思考が機能する余裕がみる減っていく。精液と血で濡れた尻を打ち付けられる度に、痛い、怖い、殺すといった感情が膨れ上がる;だがその感情をどうにかコントロールするというのは難しいことらしかった。
はっ……はぁっ……く、そ、がっ……
霊夢が毒吐くと、正面付近にいた男が霊夢の前髪を掴み上げて顔を上向かせる。霊夢は正面に現れた男に向かって唾を吐き、睨みつける。男の方はと言うと、顔に飛んだ霊夢の唾を拭って目を細める。少し笑ったような、穏やかな表情を浮かべた直後。
ガスッ
うっ!
男の拳が霊夢のこめかみ辺りに打ち付けられていた。喧嘩っぱやそうなゴロツキ男の拳は相手に痛みを与え、自分の拳は痛くないように、やり慣れている。
おっと、顔はまずかったな?
脳震盪が起こったりするほどではなかったが側頭部に強い痛みが爆ぜ、じんとそれが熱を帯びて残る。霊夢はしかし、再び顔を上げて男の顔を睨みつけ、つぶやいた:この猿が。
……ふふ。っはは!いいねえ、その表情!ますます……痛めつけたくなるな!!もっとぶっ叩いてやれよ!
ひひっ
びしいっッ!!バァンッ!!
後押しの言葉を受けて、性交中の男が余計にサカってまたケツを叩き始めた。もうそこはとうの〝綺麗な尻〟などではなくなって、ただ傷だらけの赤いものになっている。
ころ、す、お前たちは、ニンゲンじゃ、ない……!
オレたちがニンゲンじゃない?それを、博麗は決める権利があるのか!なるほど、そいつは強権だ!ますます憎たらしいぜ
ずばあっん!!ずるっっっ!ばちぃっっ!!
……っあ、くそ、やろうっ……が……!
肉が割れ血がだらだらと流れ出している、痛いというよりも燃えているみたいに熱くて、痛みのサイズにピントが合わずただ〝苦しい〟と解釈されてしまう。怒りは男と人妖にまっすぐに向かっているが、それを果たすには手足を絡め取る黒い粘体生物をどうにかしなければならない:身動きは取れない。尻の皮膚と肉の痛みだけではなく、強打を何度設けているせいで腰の関節にも負担がかかっていて痛みが増していた。ヴァギナに刺さった肉棒のことなど、もはやどうでもよかった。いつの間にか膣内に精液のヌメリが注がれているようだったが、痛みに比べれば何ら辛いものではなかった。四つん這いの背中越しに、男が手を振り上げた雰囲気を察知するたびに脳の中央が機能を停止してそれが尻を打つ未来を遮断しようとするのがわかった;逃避的な防衛機制だったろうしかし、失敗に終わり続けている。尻に打ち付けられる衝撃、肉が裂ける感触、そこに精液が流れ込む。皮膚を挟まずに神経でちょくに感じる精液の流れ、痛み。
お……ぁ、ぁ……
これは博麗の巫女の尻たぁ、いい眺めだ。触って潰して爪で引っ掻いたあとの桃みたいだぜ、果汁なんかよりよっぽどいい色で濡れてやがるし、なあ?
男が無遠慮に裂傷まみれになった尻に手をおいて血塗れになったそれを撫で回す。それだけでも激痛が駆け巡るというのに、剰え男は指を立てて裂けた傷口をなぞり、ほじるように触ってくる。
いっ……
いいざまだなぁ、博麗の巫女
四つん這いのまま拘束されている霊夢からはその評定こそ窺い知れないが、男の声はどこか恍惚とした穏やかさを持っている;指を立てて傷をなぞり触り回し霊夢が痛みの声を上げる度に、男のペニスは霊夢の膣の中でびくん、と固く震えるのだ。霊夢にとって、その異常さは、妖怪の持つ人倫を逸脱した様と同じかそれ以上の嫌悪感を覚えるものだった。
博麗の巫女がよお、妖怪による人間支配の機能だったなんてなあ。裏切られてたんだな、オレたち人間は、博麗から
ち、ちがうわ……私は
違わねえだろ!!何の力だか知らねえが、その力のせいで妖怪はお前に退治されないように媚びてよ、博麗はそうして人間と妖怪の間を取り持つようなツラをして、妖怪と宜しくやって自分は利権を守り私腹を肥やしてよ。ズブズブのカンケイじゃねえか。利権かよ。博麗はよ。
そんなんじゃない、私は、人間の味方よ。そこの人妖のほうがよっぽど……あっっぎいぃぃっっ!!!
その構造悪のことを教えてくれたのが、占い師様だ。もう騙されねえぞ、博麗の巫女。その傲慢な立場を知れば、いつものオレたち下賤の人間に対する態度も、理由が知れるってもんだぜ
そんな態度、したこと無いじゃない……!私は
言い訳しないで、素直にあやまれよ!!!!
ばしぃっっっ!!!
ああっ!
謝ればいいんだよ、人間を裏切ってること!ごめんなさい、ってよ。妖怪の味方をしてたこと、騙してたこと!若い女の立場を使ってそのちょっといいカオでオンナを武器にして人間も丸め込んで、実際には裏切ってたんだってこと、謝れよ、クソ巫女!!!
ばし!!ベシンッ!ベチン!スパアアン!
男が激怒するように叫びながら、一際強く霊夢の尻を何度も何度も叩きまくる。納屋の中に響く音は当初の平たい平滑面を叩く破裂音から微妙に変化している、既に表面の質感が元のとおりではない。真っ赤に腫れ上がり皮膚が裂けて血が流れ、まるで尻には見えない酷たらしい姿になった尻を、さらに、何度も何度も、男は恨みを込めるように容赦なくぶち続ける。
痛みなのか、惨めさなのか、あるいは今はこの状況を脱出できないという諦めからなのか、霊夢はついに、上半身を捻って自身をレイプし続ける男を振り返った。
謝る、あやまる、からっ……!
へえ?あやまる?どうやって?〝謝るから〟っていうセリフは、謝罪じゃねんだけどな?
バシンッ!!
ヒぐっ!あ、あ……
もう一発、躾けるように、言葉の代わりに殴打。霊夢は周囲の男達を一瞥し直し、もうこの状況がひっくり返らないだろうことを悟ってしまう。そして。
ごめんなさい……
ああ?聞こえねえな
ごめんなさい!生意気な女でごめんなさい!!
四つん這いで、言われたとおりに顔を上げた霊夢の鼻先にペニスを向けた男達が、申し合わせたようにフィニッシュに向かってシゴキを加速する。鼻が曲がるほどの悪臭が霊夢に向かって漂う;霊夢は喉の奥を閉じて鼻からの気道を閉じながら、言われたとおりに口を開ける。そうしなければ、更に痛めつけられる。霊夢はの内心はともかく行動は既に、恐怖に従っていた。
びゅっ、びゅっ、どぶっべちょっ、びちっ
数名の精液を同時に目にすることなんて、霊夢の人生の中ではあり得なかった。そもそも精液を目の前で見ることも。三、四人のペニスがほとんど同時に霊夢の顔に向かって精液をぶちまける。こんな匂い、こんな感触、何もかも初めての嫌悪感。屈辱。だが今は、逆らう道が、無い。
ごめんなさい……逆らって、ごめんなさい
本心で言ってるのかぁ?
本心、よぉ……
ふん。んなわけねーよな。
当然本心からの言葉ではなかったが、微塵も相手の容赦が得られなそうであることを、霊夢は悔いた。目を閉じて、奥歯を噛む。本心ではないにも関わらず親しい人間や自分自身を蔑ろにする言葉を大声で並べ立ててしまったことに、恐怖に駆られて自己嫌悪が不可避なセリフを連呼したことに、沈痛な思いに沈んでいた。
お前が必死に謝っていた間、結構よく締まってたぜ。お友達を、恩人を、自分自身を裏切るようなセリフを吐きながら、レイパーのちんぽを締め付けた気分はどうだ?ん?
霊夢は何も言えない。口を開けばろくでもない言葉が出そうで、必死に真一文字の唇の上と下をくっつけ続けることに意識を集中した。目も閉じて、周囲の光景が目に入らないようにもする。可能ならば耳だって塞ぎたい、そうして光と音を塞いだ後で、首の後から後頭部のあたりをつたい続ける余計な情報も、遮断したい。だが、それは叶わないようだった。
もう一発射精すぞ、糞女
男が細く腰を揺すって膣内での摩擦を強める。霊夢はしかし、そこに嫌悪感を感じている余裕はなかった。痛みの方が切迫している;なんせ男はずたずたになったて血に濡れた尻を撫で回しながら腰を動かしているのだ。セックスに慣れていない膣の感触よりも、尻の痛みのほうが何倍も強かった。そして、霊夢の膣内に、男の何度目かの精が吐き出される。
ふぐぅっっ……
今回の射精は一際長かった。霊夢も処女ではない、慣れていないとはいえ痛みは尻の傷ほどのものではないが、内側にどろと流れ込んでくる気味の悪い液体の感触は、耐え難い嫌悪を誘う。霊夢の中で射精を終えた男のペニスは、くん、くん、と絞り出すように動く。膣壁で先端の残り汁を拭うように蠢かせて、そして、ずるり、と抜き取られた。
顔にも、尻にも、そして膣内にも精液を受け止めさせられた。裂傷がひどい尻の痛みは引かない。霊夢の憎しみは、ますますに増していく。普段のように口に出して相手を罵倒できない分、裡に溜まる悪意はひとしおだ。だが、これを吐き出せるのはいつだろうか。なんとかしないとと、霊夢は辺りを視線で探る。
この状況を抜け出したら、容赦しない。絶対にぶち殺してやる。いや、その前に、泣かせて、土下座懇願させてやる……!こんな奴ら、人間の風上にも置けない。守る価値もない!
なんかまだ抵抗しそうなオーラでてんな?
……
まあ、いいさ。別にこれで終わりってわけじゃあない。
まだ、なにかするの……?
たりめーだろ。まだまだ楽しみはこれからだからな。だよな、占い師様
占い師、とよばれた男はお説法でも聞き入るように、神妙な様子で頷いている;霊夢と男達の間に入ることもなく参加することもなく見てさえいるのかわからない、とかく今起こっていることに対してまるで他人事だった。
あいつを、なんとか、できれば……
男達に謝罪の言葉を撒き散らしながら霊夢は、注意深く人妖の様子を窺い続けていた。だが。
機会を窺う必要なんて、ないわよね
霊夢は、半ば強引に、でも確信をもって、すぐに行動を起こした。霊夢にはその性質がもうわかっていた、こいつは、強引にでも切り抜けられる相手だ。幾つもの妖怪を打ちのめしてきた博麗の巫女としての経験が、勘を予言に変える。
あんたら……覚悟できてんでしょうね
減らず口を
ふん、霊夢は男のセリフを鼻で笑い飛ばし、そして一気に、力を込めた。〝出血するコールタール〟の絡みつく腕に、肩に、体幹を乗せる腰回りと膝に。それに抵抗するように、〝出血するコールタール〟の、どろと粘体をなす表面が突如として雲母の希薄な重なり合いのように硬化した。四つん這いを強いられている膝に重心を移動し、片方の肩に肘に、一層強く力を注ぎ込む;腕を、引き抜くような動作。表面の硬化を確認した霊夢は、歯を食いしばるように一瞬顔を顰め、そして叫ぶ。
っざけんじゃねええええええええっ!!!!
■■■■
「■■■■」
「■■■■」
「■■■■」
「■■■■」
「■■■■」
■■■■
「■■■■」
■■■■
それでもそのまま力任せに引き抜こうとする霊夢。出血するコールタールから腕を引き抜き脱出することを考えるのならば、柔らかいままに保って抜いた方が楽に思える。そう、表面を硬質化させているのは霊夢ではない、腕を引き抜こうとする強靭な力を察知した粘体生物の方であった。
ゆっくりと引き抜けばあこの粘つく生き物は容易に形を変えて腕を上げることはできるが、その代わりに離してもくれない。知能が備わっているわけではないのだろう、弱い力には柔軟にまた強い力には強靭に抵抗するダイラタント流体プログラムが施されているに過ぎないらしい。霊夢はそれを察してそこに付け入ろうとしていた。一気に力を込めて硬質に対応させその上で破砕して脱出することでこの状況自体からの脱出を図っている。
おいおい巫女さんよ、そいつはそんな簡単じゃあないぜ?
嘲笑う男の声を尻目に、納屋の屋根を吹き飛ばさんほどの声を響かせて、霊夢は引く腕の力を増していく;少女の細い肩周りが筋肉を増して盛り上がったように見えるほどの力み、そのボリュームが押し出されるように腕の方もわずかに太くなったように錯覚した。霊夢が背中から肩、腕に関わる筋力を一気に増す。ぱき、ぱき、と表面を固めてそれに抵抗しようとする粘体。
霊夢の叫びと力みに抵抗するように〝出血するコールタール〟の表面に浮かぶ顔のような無数のテクスチュアが凹み口を開いて声と、それに赤い水を吐き出す。その側から粘体は表面をぱきと硬質化させていく;赤子の顔のような表面に硬直と同時にヒビが入り、割れ、その隙間からも赤い水と黒いゲルが押し出されるように溢れ出していく。
霊夢の強引な脱出に抵抗する〝出血するコールタール〟だが、霊夢に力負けをしているように見える、強い力に対して強靭化で抵抗する〝出血するコールタール〟は、霊夢の腕を咥え込む表面に、より深くより細かい罅を刻んでいく、腕の肌が触れる最密接距離では、粉々に砕けて本体から分離してしまい機能の可逆性を失って硬いまま死細胞となった破片が現れている。これが霊夢の狙ったものだ、こうして一気にだが少しずつ、この拘束を〝削ぎ落として〟いく。
「■■……■■」
パキ「■■■■」
パキ
■■■■
パキ
「■■■■……」
おいおい、まじ、かよ……占い師様、これ……!
そして、いよ右手の表面に接する部分がすべて硬化死細胞となって隙間を生じた、霊夢はそれを力づくで砕き割って、右腕を引きずり出そうとする。キンッ、と妙に軽く共鳴する高音、まるで金属片が弾けるような音を立てて、黒い雲母状の破片が大きく抉れるように砕けた。霊夢の右手が、自由になる。
博麗の巫女を、舐めるんじゃないわよ!あんたらみたいな甘っちょろい思考で、利己のためだけに動いてるわけじゃないのよ!越えてきた修羅場の数も、背負うものの重さも、あんた達とは比較にならないのよ!
キン、パキ……パキ、ペキ、キンッピシ、パキンッ
部屋の中に響くのは、霊夢の手足が一本一本硬化した〝出血するコールタール〟の拘束を捩じ切って脱出する、しかしその込められた力の大きさに比して小さく寂しい金属音。
男達は博麗の巫女が手足を抜き取るのを阻止するため飛びかかろうとするが、足元の黒い粘体が、何故か急に男達を捕らえ始めていた。彼らの足は持ち上がることなく、バランスを崩して倒れると手も胴体も、黒く伸し掛かる異様な重圧にうめき声を上げ、やがて潰れるように全身を地べたに這いつくばらせる。
そうして地面に押し付けられてしまえば痛感するのだ、これに宿られて四つん這いで済んでいた博麗の巫女の力の大きさに。男達は誰ひとりとして腕立つ事もできていない。ただ一人、入り口付近でその光景に目を細めている人妖を除いて。
世話ンなったわね
その手は赤い液体に染まっている。それは、〝出血するコールタール〟の吐き出す液体、だけではないようだった。この脱出に、博麗霊夢は自らの血の赤も厭わない方法を選択し、そして見事に脱出してみせた。対し、男は今、這いつくばって顔を上げ霊夢の方を見るので精一杯だ。
自由になった彼女は、肩を回すように動かしながら、手首とそして手指を柔軟させている。本当に柔軟運動が必要なわけじゃない、男達と人妖に〝私はもう自由になったぞ〟と言外に見せつけるためのポーズだった。
覚えて、いるわよね:あんたらにいいようにされていた間、私は、あんた達になんて言っていたかしら?
〝出血するコールタール〟の声と赤い液体によって無力化されていた筈の霊夢の霊力が、復活した。彼女の赤く染まった手の周りに、再び青白い光の靄が漂い始める。黒の粘体が男達をとらまえたのと同時に、霊夢の霊力も拘束を解かれていた。あっさりと掌?を返した〝出血するコールタール〟の動きにほくそ笑みながら、霊夢は霊力を湛えた右手で、横たわる男の顎を掴み上向かせる。
あっ、……おぅっ、ぁ…………っ
痛い?ねえ痛いかしら?さっきの私はね、もっと痛かったのよ!?
顎の下に手を更に滑り込ませて、霊夢の指先は男の喉に差し掛かる。その指が、男の気道を潰している。瞼がカッと見開かれ、呼吸が途絶える。口の端から唾液が滴り、そして、とぎれとぎれの嗚咽が泡とともに口から漏れ出した。
ひゅーっっっっひ、ふひゅーーーーっっ、ひゅーーーーっ、はーーーっ
落ちる、その直前に霊夢は喉を締める指を緩めた。気道が通り、男は既のところで酸素を貪る。酸素を得て男の意識は苦悶から解放されて一気にクリアになった。しかし、霊夢はそこで再び喉を締めた。
ぐ、げぇぇっ、……あ……がっ……
酸素を得て本能から安堵していた男が再び酸素を立たれて窮状を訴える。命の危機を伴う苦痛はすぐに脳髄を溶かして正常な思考を失わせる。苦痛と辛苦が、脊髄のホースを伝って脳に注ぎ込まれるかのよう、たぷと恐怖の水が溜まっていく。その水が脳を満たす直前、あるいは肺から酸素が全く欠乏する直前で、霊夢は再びのどを解放する。そしてまた指先に力を入れる。途絶えているのは呼気だけではない、霊夢の指は首を通じる太い血管も的確に圧迫して阻害している。呼吸が苦しくなるだけではない、男は意識を強奪されかけ何とか抵抗し死守が難しいとそれを手放す直前で、手元に戻される:そしてまた強奪。「どう?」霊夢は薄ら笑いを浮かべて男の顔を覗き込んだ;呼吸と血流の両方を弄ばれる男はしかし、指先一つで自分の命を転がされていることよりも目の前の少女の貌に震えた:あまりにも冷たい。
無慈悲な、妖怪巫女……ぐげっ
男が絞り出すような声で霊夢のことを〝妖怪〟と呼ぶと彼女は、手先に何事か力を籠める。男は喉奥から潰れたような音を漏らして、かくんと力なく頭を垂らした。
誰が妖怪よ?
そう言い捨てて、男の体も打ち捨てる霊夢。髪の毛を束ねるリボンの辺りに手をやり、何かを引き抜くように摘み出す;ぷつん、と切れるように途切れたそれは、空間的にとてもそこに収まるはずのない長さの、一本の針、になって霊夢の指から鋭利に伸びた。少女の器に不相応な剛力で硬化拘束を砕かれたコールタールは硬質化したまま機能を失った破片と柔らかいままの部分とで恐慌したようにのたうち回っている。
こんな物を使うヤツの方がよっぽど質が悪いわ、妖怪なんかよりもよっぽどね。人間に危害を加えない?笑わせんじゃないわよ、こんな趣味の悪い代物使っておいて
それは人間を食った妖怪をハクレイが殺したときの鬼哭を押し固めたものだ、お互い様の結晶というところか?安心しろ、人間の魂にしろ、妖怪の怨嗟にしろ、これが死んだ後には全て解放される
私が壊さなかったら、どうなっていたのよ
もともとお前のために作ったものだ、そんなIFに意味はないだろう
赤い水をべちょべちょと流しながらのたうつ黒い黏稠体、機械的な判断に基づいて死細胞となった硬質片をせっせと排出する有機運動を続けている;霊夢はその混濁した動きを目を細めながら見、そしてある一点に向かって針を投げた。先端から末端までの線が全く飛行ベクトルと一致する見事な投擲は、のたくり続ける〝出血するコールタール〟に吸い込まれるように刺さった;瞬間、せわしなくのたうち回っていた黏稠体が、まるで時間を凍結したように動きを止めた。粘り気が強いとはいえ重力に引かれて滴る動きを見せていた骨のない腕を空中に伸ばした姿勢のまま、滴り落ちることさえやめて停止している。周囲には、雲母片が断続的に砕ける高い音と、一人ではない無数の子供がそれぞれ「いたい」「やめて」「こわい」とつぶやく声とが、混じり合った音が響いている。〝出血するコールタール〟は霊夢の針の一撃で全身を硬質化させ、固まった全身に罅を走らせている。罅の隙間からは、赤い水が流れ出してきていてその勢いがみるみる強くなっていく。そして。
■■■■!
■■■■
■■■■
■■■■!!
■■■■……
■■■■!
■■■■
■■■■!
■■■■……!
一際大きな砕叫音を響かせたと思うと、霊夢が腕を引き抜いていたときのような小さな破片ではなく、黏稠体の全身を粉砕したような大きな塊片になってその全身が砕けた。そこに収まっていたとは思えない不整合な体積の赤い水が怒涛を打って溢れ出し、納屋の内側に赤液の坩堝をなす。硬質化し全身が死細胞となった、つまり死に絶えた〝出血するコールタール〟の体が赤い水の渦の中央へ押し流されるように転がり、しかしその流れが止まると同時に動きも止まり、きぃ、きぃ、と何かの声が幾つか小さく響いたがそれを最後に物言わぬ黒い岩となる。赤い奔流は納屋の中にあった藁だの農具だの丸太だのを大きく押し流しはしたものの、不思議とその壁が崩れたり扉が押し開かれたりということはない;完全に死ぬまでは「この空間の中にいる」という呪いから解放されなかったからだろう。流れを止めた赤い水だけが、呆然と状況を見る男達と、黒幕の人妖、それに霊夢の、踝までを濡らしている。男達はもう、抵抗の意志を失っていた。
後はあんただけね。來!
塞ぐもののいなくなった亜空穴が今度はぱっくりと割れ、陰陽玉がふわりと霊夢の傍に侍る。更に霊夢は再びリボンの辺りに手を埋めて再びそれを引き出す;彼女の手には、さっきたった一本で魔法生物を仕留めた強力な針が、指の股の数つまり八本、現れていた。今度はリボンがしぼむように消えて、霊夢の黒絹のような髪がさらりと流れ落ちる。
人間とか妖怪とか人妖とか関係ないわ。今まで行使した術は誰が手を出そうとも立派に禁忌ものよ。あんたが妖怪だろうが妖精だろうが人間だろうが、私にはこれを裁く権利と、力がある。あんた達全員もね。神祇大権で、彼岸も閻魔も冥界も介さずに、直接煉獄に送ってあげる;適切な霊魂保護処理を施されずに無間に焼かれる苦しみを味わい続けなさい!!
霊夢は先と同じように針を投げる、今度は人妖の男に向かって。しかも一本ではない;二本、三本と立て続けに投擲し、それら全てが見事に人妖の心の臓の辺りを正確に標的している。真っ直ぐに飛び、〝出血するコールタール〟と同じように核を貫けば、息の根を止められるだろう。だがそれは、そうなる前にはらりと赤い水の上に降りた。針は突如姿を元の糸に戻し、空中で失速して落ちたのだ。「なに……?」と霊夢は狼狽しながらも残りの針を全て投げる。だが同様に糸ひらとなって赤い水に浸った。
くっ、まだなにかを
霊夢は陰陽玉に命じて何か術を発動させようとし、人妖の男はそこで柏手を打つ。ぱしん、という音と、水音がリンクした。水面が弾けて水飛沫が陰陽玉に跳ねる。霊夢の命令を受けて術を励起していた陰陽玉の反応がすっと失われる。
こいつ、まだ、生きて……!
とっさに飛び上がろうとした霊夢、だがその足に無数の手が掴みかかってそれを阻止していた。人の手としては不自然にひょろ長いが、全体的なフォルムとしては人の腕に見えるそれは、赤い水の水面から生えている。霊夢は飛翔を阻止され、再び地面に引きずり降ろされる。何か術を発揮しようとしたが、この赤い水には破呪の効果があるらしい。血飛沫を撒き散らされたように霊夢の体は赤く染まる。水に濡れた燐寸のように、霊夢の術はことごとく不発となった。
飛べぬ巫女はただの巫女だな。この部屋は、ハクレイ、お前のための特別しつらえだ。仲の良い魔女だの、吸血鬼だの、人形師だのなら、用意に抜けられるだろうが、お前だけは違う。ハクレイ、思い通りになると思うな。お前はここで、終わる。
……終わるって、何がよ
人妖は、小さく低く、言い放つ。
すべてだよ。お前のじゃない、オレのだ。日陰で支配される側の、しかもそれに気付きさえしないまま生きていた、惨めなオレの全てだ。
もう用は済んだと言いたげに、人妖は霊夢に背を向け、扉を開けてその場を去ろうとする。
安心しろ。オレ自身は、別にこの幻想郷を破壊しよう、人間を滅ぼそうだなんて思っていない。ただ、支配側に立って、安心して生きていきたいだけなんだ。お前が安穏と過ごしていた、その日なただよ。それ以上は、望んでいない。
待ちなさい!そういうわけには
ただ、彼等は、どうだろうな
えっ……
赤い水は、縮むように小さな水溜りに縮重して部屋の片隅で揺れている。まるで霊夢を監視する、人妖の代理のように。対して、霊術を失った霊夢に対して、男達は再び強気の態度を取り始める。
さっきまで怖気づいてたってのに、現金な奴らね。博麗をこんな目に合わせて、紫がこれを嗅ぎつけたらお前達は
ああもう、ぐだぐだうっせーな。結局妖怪頼みか。いい加減に立場をわきまえろ、よっ!
ぼすっ!
ぐ、がげっ……!
男達の中でも一番大柄な男が、霊夢の頭よりも少し小さい程度な程に大きな拳を、まるで躊躇せずにお腹にめり込ませる。霊夢は逆流しそうな胃液を喉元で辛うじて締めて追い返す。だが、もう一発。
さっき見せた怪力はどこ言ったんだよ?今はか弱い女子でーす❤か?
そのうち死ぬほど見せてやるわよ、死んでからじゃ、やめて、とも懇願できないでしょうけどね、をブっ……!!
もう一発。
うっせーよ、妖怪の走狗が
さっき貰ったのとほとんど同じ場所にもう一度重ねられると、重なった衝撃部分に何か違和感が生まれていたことを初めて感じた。そしてその上から改めて強打を貰う。痛みは、妙に広い範囲に広がったように感じられた。
うが、げっ
痛みにお腹の中が捩れ回って、不随意な蠕動運動が暴れたと思うと、再び胃の中のものが急に上の方へ走り始める。喉が勝手に開いて、反射的に首を伸ばすように動かしてしまう。舌が意図せず口の中で伸びて食道から口の外への一直線の経路を作ろうとしてしまう。食道が意に反した逆流を促して、霊夢の体は自分のものにも拘わらず自分の言うことをきかなくなっていた。上ってくる、上ってくる、止められない、喉を閉めようとしても言うことを聞かない。お腹の中だけが仰け反るような痙攣じみた動きを繰り返す度に、胃の中のものが、激流をなして遡ってくる。上ってくる。なんとか飲み込み直そうと溜飲を上書こうとするけれど、それよりも何倍も強い力で、迫り上がってくる!絶望する霊夢、それは眼前に迫っていたいや、喉奥に。
で、ちゃっ……う……
ぐ、ぼ、ぁげえっっ……ぐっ、っおっ……げほっ……!
あえなく腹の中のものは胃を出て、食道を上り、喉を遡って、口から吐き出された。
四肢を縛り付けられたまま吐き出された吐瀉物は、一吹き目こそ僅かな放物線を描いて足の少しを汚すだけだったが、二周目の反芻運動で吐き出された分は勢いが緩く、口から溢れ漏れる様な流れで、胸元、腹、太股までにかかってしまう。体のほとんどが嘔吐物で汚れてしまった。穀物主に白米の破片、野菜の溶けカス、魚の身、貝柱、液体になった豆腐、味噌、etc……、この時間であれば朝食か、取っていれば昼食の内容だろう。
ぐっ、ごボッ!げはっ、はあっ、うぶっ……!
うわ、きったね
あーあー、ゲロくっせえ、こりゃあいいもの食ってる匂いだわw
くっせえな、水汲んでこい
辺りには腐った牛乳の匂いを更に濃縮したような、悪臭と言うよりももっと生々しい異臭が漂い始める。豊富なタンパク質、脂肪分が、分解されている途中の姿、それに、匂い。男の誰かが言った通り、これは確かに、貧乏ではない食事をしていないと、そうはならない嘔吐物の匂いだ。それを察した男たちは、悪臭で顔を歪めると同時に矢張り博麗の巫女が決して貧しい生活をしているわけではないむしろ裕福な食生活を送っていることを察し、余計に怒りを募らせた。
男の一人が水を汲んで来たバケツで、その吐瀉物を洗い流す。頭の上から無造作に、それが敬われるべき博麗神社の巫女姫への扱いであるとは全く思えない乱暴さで、男は川の水を頭からかぶせた。
ばしゃあっ!
ひゃはは!ゲロ洗うつもりだったけど、これウケるわwwwもっと汲んでこいw
男はバケツ何杯分もの水を無造作に霊夢にぶちまけ、体中の嘔吐物を洗い落とそうとする。だが途中からその目的が何なのか、不明瞭になっていた。頭の上から水を浴びせたところで洗い流すには効率が悪い、無駄に何度も何度も水をかぶせ続けていた。嘔吐物の残滓はすっかり洗い流されたというのにそれは続き、まるで水責めのような様相を呈していた。
こいつ、ら……
執拗に水を浴びせられながらも、腹の痛みが引いて抵抗を見せれば再び容赦なく腹パンが打ち込まれる。霊夢は徐々に抵抗の意思を失っていく。
おい
え
ばしゃっ!
いよいよ男の手は霊夢の頭を掴み、バケツの水を霊夢にかけるのではなく、霊夢の顔をバケツの中に突っ込んだ。当然まだ水は入っている。
おいおい、それはやべーんじゃねーのぉ??
構うもんか
ふ、はあっっ……んぐぅっ……
嘔吐で呼吸が不自由にな順番待ちの遠い気道、その順番がようやく回ってきても水が顔にかけられる。さらにその合間の僅かな時間に、霊夢は大きく息を吸うことになった。一気に肺に吸い込んだ呼気、男たちが吹かす薬草煙草の煙が肺の中いっぱいに広がる。吸うべきではないとわかっていても、背に腹は変えられなかった。
べちょべちょになって苦しそうな霊夢ちゃん、すっげーエロい……ヌいていい?ヌくわ
な……に
窒息寸前で呼吸に必死な霊夢の顔に向かって、男がペニスをしごき立てていた。一心不乱に霊夢の、濡れそぼりった肌から髪から水を滴らせ、涙を浮かべて瞼の中に睫毛に目尻に涙とも水ともつかない雫を宿して、荒い呼吸に肩を上下させながら、涎が垂れるのも構わず大口を開け舌を垂らして必死に呼気を求め、ている霊夢の無様な顔に、男は欲情を見せている。
きもち、わる……
目を背けようとすると、男は左手で霊夢の前髪を掴んで上向かせる。目の前にどころか扱く手が当たるような至近距離に男のペニスがあった。悪臭、腐った牛乳のような匂いは自分の吐瀉物のそれと似ている、と思った。薬草煙草の匂いよりもよほど不快だ。ピクと震えているようだが、乱暴な手コキでよくわからないただ、小さく窄まるように動いた後には透明な液がじゅわ、と滲むのが見え次の瞬間に手の中に収まってペニス全体に塗り拡げられていく。
霊夢ちゃん、霊夢ちゃん、霊夢ちゃん霊夢ちゃん霊夢ちゃん霊夢ちゃん霊夢ちゃん❤
まるで呪文のようだ、呪いには違いないだろうけど:霊夢は思った。鼻先に触れるペニス。滑った男の先端の粘膜と自分の鼻の間に一瞬糸が引くのが見えた。
さっさと済ませなさいよ、この粗チンやろ、んごっっっ
霊夢が男を睨みつけた瞬間、男はペニスの先端を、事もあろうに鼻の穴に押し付けた。
あ、あにふんの……んっ!?んっぐゴごォぉをおぉっッッ!?
ば、バカじゃないのこいつ、なんで鼻の穴に……!?
鼻先に感じる、精液が尿道を駆け抜ける音、吹き出す圧力。鼻の穴に満たされる精液、行き場を失って奥へ押し入ってくる。何度も脈動してその度に鼻の中に押し込まれる粘液、匂いを感じている余裕なんて無い。何度目かの脈動で、霊夢の副鼻腔を男の精液が満たした。鼻の奥、目の下がジリジリと痛みを訴えている、それでも押し付けられたままの男のペニス。
フごっ……!んぐっ、げはっ、んぐ、う、ンんっっぐごごごぉぉおををっっ!!!
脈動は終わらず、精液の噴出は続き、口の中に流れ込んでくる。一部は鼻の付け根を上って涙腺を割って出てきた。目に染みる。口に流れ落ちてきた精液を吐き出そうとするが、喉元から近すぎる場所で粘り絡みつくので、その多くを結局飲み込んでしまった。
ぐ……げ、げほっ
やがて男の射精が終わる、まだ硬さを保ったままの肉棒が霊夢から離れると、副鼻腔を満たしていた精液が鼻から抜けて垂れた。鼻水ではなく精液が、鼻の奥からズルと抜けて出ていく感覚。鼻の奥に残る激痛。わずかに感じる精液の悪臭。
ふー、でたでた❤霊夢ちゃんのお顔がエッチすぎていっぱい出たよ❤
おまえ射精しすぎだろ。見ろよ、博麗の巫女が鼻の穴からザーメン垂らして顔真っ赤にしてるぜ。
男は清々しそうに笑う、だが霊夢にはその一度の行為だけで、その表情が恐ろしいものに見えるようになってしまっていた。気持ちよかった、と告げる男に、反射的に身を強張らせる。鼻の奥からはまだ、おぞましいものが溢れ出している;だが鼻をかむように吹き出してしまう勇気が持てずに、ただ重力に任せて鼻ザーメンを垂らすしかできなかった。鼻から溢れ出す精液が口に入るのを裂けて口を閉じるが、鼻では今呼吸ができない。仕方なく口を小さく開けて呼吸をすると容赦なく精液が唇を伝って入り込んできた。手で拭おうにも、腕はまだ拘束されたままだ。無様に鼻からザーメンを垂らし、それを自分の口にたらしこむ霊夢。涙点に逆流してきた精液に混じって、本物の涙が、溢れてきた。
洗うぞ、ゲロもクサいがお前の精液なんざいつまでもたらされたらかなわねえよ
精液を鼻から抜ききらないうちから、再び水をぶちまけられる。次から次に顔や上半身にかかっていた精液を洗い流される。再び霊夢を水責めが襲う。それどころか、男は先程のように霊夢の前に水を張ったバケツを置いてこういった。
おら、鼻洗えよ。鼻ん中だ、鼻から水吸って吐き出せ
同意を得る暇も、呼吸を整える暇もない。男は霊夢の頭を掴んで顔を水の中に突っ込んだ。鼻うがいにしたって長過ぎる時間、霊夢の顔を水の中に突っ込んでから引き上げる。
う……げはっっ……
まともに呼吸をする時間も与えずもう一度。顔をあげようにも、先の剛力を宿そうにも、今の霊夢にはできない。ただ、男達の暴力に晒され続ける。
や……ば……これ、私、流石に……駄目……
さんざ水責めに沈められて、霊夢の抵抗の色はすっかり消しさられてしまっていた。術もすべて不発になる、許しを請うても一度反抗しようとした前科から、油断を見せる様子も許される気配はなかった。服を脱がせるのも面倒だと適当に破り捨てたままの装束。
も……やめ、て……
勢いが余って腹以外にも殴打が加えられていた。白く綺麗だったなだらかな腹は、青紫に変色して膨らんでいる。痛みに歪む霊夢の表情、やめてと懇願する声はもう細い。
おきろー
ばざあ、と再び水をかけられた。吐瀉物のカスはもう見る影もないが後から後から殴られて絞り出させられる胃液だまりはそこら中にある。それでも水をかけられ続けていたのは、そうすることで霊夢がおとなしくなることを男たちが覚えたからだ。
寒い。水をかけられたから、だと思いたかったが、この夏の気温では水をかけられてこんなに寒くなるだろうか。霊夢は震える。寒い。がたがた震える位寒い。不自然だと思ったけれど、理由なんて分からなかった。こんな短時間で風邪を引いたのだろうか。
だいぶおとなしくなったじゃないか
ひっ……!
腹に貰った殴打のせいでお腹がまだ痛い。なんだかずうんと、重い痛みが残り続けている。
男の声に、霊夢は無意識のうちに悲鳴を上げ、体を縮こめ、膝を抱えるように小さくうずくまった。震えが、止まらない。寒いから?風邪を引いたから。お腹の痛みは引かないし、風邪を引いた寒気はがたがた震えてしまうほど。震えは、寒いから?霊夢の思考は回転が鈍り始めていた。
はははっ、あの生意気だった博麗の巫女様が、今は随分可愛いこったな
やめ、て、もう、殴るのは。お腹、痛いの
そりゃあ、おめえ、オレらだって無駄に殴ったりはしてねえだろ?お前が抵抗して、生意気な口を利いて、うるさく叫ぶから、仕方なく殴ってるんだ。だったら……分かるよな?
男が振り上げるでもなく、でも敢えて霊夢の視界にその握った手(拳ほどにはしていない)が、入るように、見せる。その光景だけで、ずきずきと痛みを残すお腹の痛みが、魔法のように急に強くなる。冷や汗が溢れて、正常な思考が出来ない。焦り、恐怖、痛みの記憶。
男が「わかるよな?」と聞くのに対して、彼女は不随意にあふれ出てくる涙を瞬きで追い出しながら、こくこくと頷いて見せた。それ以外に、見せられる反応なんて無い。
もう、やめて……
霊夢の声はか細くて、男達は聞こえない振りをしている。聞こえていたところでやめようとは思わないから、単に返答が面倒くさいだけなのだろう。
霊夢は、やめて、と言いながら、もぞと動いて四つん這いで尻を男の方へ向ける。性交してもいい、というポーズだ。水責めされ、殴打され、体に言い聞かされた結果、霊夢はセックスを材料に男の気を紛らわせることを覚えた。
尻がグロ画像過ぎてバック無理だわ
わかるー
最初に誘拐にあってからもう三日目。一日目で負わされた尻の裂傷は乾いてきているが、傷が深かった箇所はかさぶたにもなっていない。水責めで心を砕かれてから一晩男達の慰みものになった、霊夢も股間を使えば男達の怒りを宥められるとわかったが、しかし男達の性的興味は早くも食傷に至っているようだった。これから何をされるのか、霊夢は心の芯から凍えるような思いで男達を見、その会話を聞いている。
そもそも霊夢ちゃんの顔見ないとかおかしーんじゃないの?こんな可愛いおにゃのこが、オレのちんちんでアヘって
アヘってねーだろ。しかし最初こそたまには噛みつきそうな顔で睨んできたからまだ燃えたけどよ。もうあんな感じだ。なあ、博麗の巫女さんヨォ!
男が霊夢のことを大声で呼ぶ、霊夢はビクン、と跳ね上がるほどの反応で怯えを見せた。霊夢がそれほどに怯えるのには理由がある。水責めで心を折られたのもそうだが、その形跡は腹にあった。
もうあそこガバってんじゃん。鍛えてるっぽいから最初めっちゃ締まったのに。お前の魔羅でかすぎんだよ、少し遠慮しろよ
ガハハハハ、褒めんなって
ほめてねーし
あれよ、腹殴ると一応締まるぜ
そうそう、イソギンチャクみてー
ああ、お前らそれでさっきボコボコ殴ってたのか。ちょっと楽しそうだったけどよ
ああでもしねえともうイけねえわ
首絞めたら?締まるって聞くぜ
それもやってみるか
霊夢が聞いているところで、あけっぴろげに霊夢について酷い仕打ちの話をしている男達。それを聞いて霊夢はガチと震えている。破れた装束の下に覗く腹には、幾つも青い痣が見えていた。水責めは収まったが、事あるごとに腹に殴打を入れるのは終わっていないらしい。
反抗的な態度を黙らせるのにも、男達の些細なストレスを発散するのにも、性交時に膣を無理やり締めさせるのにも、気軽に腹パンを入れられていた。挙句の果てに、これからはただ娯楽目的で殴られるのかも知れない:霊夢は想像しただけで奥歯が鳴り、涙が吹き出してくるのを感じた。
博麗の巫女さんよう、俺等の言ってる意味、通じてる?少しは〝反省〟したかって聞いてんのよ
し、したわ……反省、した
男が立ち上がり、霊夢を見下ろす。納屋―いやここは恐らく人妖の手によってただの納屋ではなく、異界に結合された別の空間だ―の中に灯された薄明かりに男の影が揺れて霊夢にかかった。内部を明るく満たすには十分な複数の灯火に投影された影は灯火自体の揺らぎによってザクと揺れて霊夢の不安を掻き立たせる。男の体躯は確かに大柄なものだったが、今の霊夢には必要以上に大きなものに見えてしまっている。
ひ……
こわい。男って、怖い。こんなに、大きかったかしら。思っていたのと違う、ずっと、人間の男なんて小さくて弱くて、妖怪に比べれば怖くもなんとも無いって思っていたのに……怖い、男……怖い、こわい、こわい……
怯えるなよ、博麗の巫女様ぁ?反省したのか、聞いてんだけどよぉ?
痛くて、怖くて、反抗できない。荒々しくて、乱暴で、抵抗できない。大きくて、重くて、押し潰されて、逆らえない。勝てない。逃げられない。従うしか無い。でも、許して、もらえるだろうか……。
霊夢の頭の中には、初日、二日目にはあった〝ここを脱出して、こいつらをぶち殺す〟という強い意志はすっかり消えていた。今あるのは、ただ、助かりたいという願い;いや違う、男の機嫌を取って痛い目に遭いたくないという、些末な行動原理だけ。
した、したわ……
ああん?聞こえねえな
反省、したわ。あなた方に、酷いことをして
どむっ!
ぐぶぇ……は、はんせい、した……がらぁ
〝しました〟だろ、クソアマ。全然反省してねえだろ!
ぼすっ!!ばすんっ!!
をぇ……ぁっっっ!ぐぇぇ、ぇっ
腹に連続で拳を入れられ、胃が暴れる。こんな状態でも健気に胃液を作って食物を待つ胃が、今の霊夢には恨めしかった。それは今や、ただ逆流して、食道と口の中を焼くだけの、余計な液だ。
っぶぇ……んぇっっ
反芻運動を止める気力も、今の霊夢にはない。上ってきた胃液をただ、いかに素直に苦痛なく吐き出すかに腐心している。舌を突き出し、勝手に締まろうとする喉を意図的に開放して、上ってくる液体を口の中へ、口の外へ。ぶると震え突き出した舌を伝って、胃液が垂れる。もはやそこに食物の残骸は入っていない;それは全て吐き出し終えた後だ。
腹を殴ってくる男に対して、霊夢は危機を感じた芋虫のように丸まって手足を縮こまらせ首を引っ込めて小さくなり、防御しようとする。こんなことをしても男が手足を掴んで広げればまた無防備な腹、あるいは股間が引きずり出されるのはわかっている。それでも、今の霊夢にできることはそれくらいのことだった。奥歯を鳴らして涙を流して鼻をすすって「ごめんなさい」と譫言のように吐き出す。
ふん。男が鼻で嗤い、唾を吐きかけてから霊夢にあらためる。
……で?
反省しました……反省しました……
反省したんなら、言うことがあんだろ、ああ!?
今度は丸まった霊夢の体を、それごと乱暴に蹴りつける。「ひっ!」蹴りつける。「いや、いやああ……」そして、踏みつけ、ぐげ、と音が漏れて空いた腹を更に蹴る。「やめて……おねがい、やめて」薄っぺらな防御が解けた頭にも、蹴り。
周囲の男は、芋虫みたいになって縮こまり、蹴っ飛ばされて転がり、いよいよ踏み潰されようとしている霊夢の姿を指差して、膝を叩いて、ゲラ声を上げて、笑っている。本当に愉快そうな笑い声;この映像さえなければ、明るい談笑にさえ聞こえるだろう。だが、ここには嘔吐と血と、惨めと圧迫と抑圧しか、ない:少なくとも博麗霊夢にとっては。
わかんねーのか?博麗の巫女の辞書には、謝罪の言葉なんてものは載ってないのか。そーか
ご、ごめんなさい、ごめんなさいっ!反省、しました、ごめんなさい!!
芋虫の防御を解いた霊夢は、這いずるように男の足元に寄ってその蹴りを勘弁してくれるようにと態度で示しながら、額を地面にこすりつけて肩を震わせる。〝ごめんなさい〟の声は叫び声にも等しくしかし涙で滲んで、よく聞き取れなくなっている。
ほーう?なんで?なんでごめんなさいなんだ?
妖怪と人間の間に立つとか嘘を言って、人間様に偉そうにしてごめんなさい……
そうだ。お前は、人間の面をしながら妖怪と通じてる、性悪の巫女だ。博麗とはそういうもんだろう。悪いのは、誰だ?悪いのは、何だ?あやまれよ!!!
どすっ、どむっ!
霊夢が謝りながら縋る足は、しかし振りほどかれて再び霊夢の腹を蹴り飛ばす。ひっくり返った霊夢は目から涙を、口から胃液を零しながら、男の足に耐えるように地面にへばりついて、土下座の姿勢を見せ、謝り続ける。それしか、彼女にできることはない。
博麗の巫女で、ごめんなさい!クソ生意気な小娘でごめんなさい!里のニンゲン達の苦しい生活を無視して、楽な生活を送っててごめんなさい!!
うひょぉぉっ❤あのいつもツンとした博麗霊夢が、無様に大声で、四つん這いで謝罪声明っ!めっちゃシコい、コーフンする、これヌけるわ
霊夢の前に立っていた例の男が、霊夢の無様な謝罪を見ながら突然ペニスをしごき始めた。さっきからさんざん霊夢の体を殴り蹴りする男は、オナニーを始めた男を小さく笑い、それ以上に蔑んだ目を霊夢に落としてから、彼女の体を足先でひっくり返す。「この男にも、あやまれ。負け犬の服従ポーズでもしながら、無様にな」ひっくり返ったままの霊夢の腹の上に足を載せ、逆らえば踏み潰すと言外に伝えると、霊夢は男の言っている意味をようやく汲み取り、そして両手をちぢこめて、腹を晒し、股を開いて、必死の声色で叫び始めた。
よっ、妖怪からニンゲンを救えない無能でごめんなさい!ニンゲンの味方なのに妖怪と通じて仲良くしてニンゲンを裏切るゲスでごめんなさい!
かわいいねえ、霊夢ちゃんかわいいねえ……!もっと謝ってよ、もっと、もっと罪悪感を込めて、自分が悪いって、何もかも博麗の巫女が悪いって告白してよ!!泣きながらごめんなさいって、謝って!あやまれ、謝れよ!死ぬまで謝れよ!!!あー射精る、ブザマ霊夢シコいわ、射精る、射精る射精る、そのきれいな顔上げろよ、いつもオレたちを見下してる偉そうな顔上げろよ!
ひっ……!ごめんなさい、私みたいなクソ女が博麗の巫女なんかに生まれてごめんなさい!!ごめんなさい、えっと、ごめんなさい、ごめんなさい、私でごめんなさい!生まれてきてごめんなさい!!ごめんなさいごめんなさい……いっっ、いだいっっ!痛いっっ!ごめんなさい、お尻もうやめて、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!!!!!!
うお、口開けろ、エロすぎる!喰らえ、エロ巫女、下賤な農民の不良在庫精子、高慢な可愛い顔にぶちまけるぞ、オラ、おらあああっ、ちっちゃいかわいいその口で汚えザーメン受け止めやがれ!
他にも数人の男がよってきて、霊夢の顔面に向かってペニスをしごき立てる。後ろでは、股を開いた屈服ポーズに踏み込んで、太ももを掴んで膣に挿入している男もいる。霊夢にはその望まない性交をどうだのと考える余裕はすっかりなくなっていた。むしろ今の霊夢は、そこにペニスを突っ込むことで男の機嫌を取れるのならと喜んで股を開く有様だ。男の方もそれをわかっていて、初日二日目ほどの興味を失っているが、こうして何かの度に挿入してくることもあるし、ただ無沙汰を慰めるために突っ込むこともある。霊夢はもう、何も感じていない。ただ、恐怖と、恐怖から逃れるすべを考えることだけが、頭の中を満たしていた。
男達が次々に霊夢に向かって射精する。膣か、尻穴の摩擦、あるいは極力殴打を避けていた顔だけが、今、霊夢の体でオカズにできる部位だ。体中痣だらけ傷だらけ、特に徹底的に虐待されていた尻の裂傷と、腹部の打撲は、男達にとっても見ているだけでペニスが萎えるほどだ。
だから、こうして無様なポーズで謝罪の嵐を発している霊夢の姿はまだ新鮮なズリネタだ;男達は久しぶりの餌だと貪るように霊夢の、残り少ない「女」体を漁る。
あ、ぶ……っ……ごめんなさい、高慢で可愛い顔で、ごめんなさい……博麗霊夢でごめんなさい……
顔に、膣内に、精液が放たれる。人妖から何らかの術でも掛けられているのだろうか。男達の性欲は随分と尽きないし何より、放たれる精液の量が人間のそれとは思えないほどだ。何回射精しても、まるで勢力旺盛な男の初発ほどに精液を吐き出す。何人もの男の精液でドロのぐちょに汚される霊夢;だがもう霊夢はそのことに忌避感など感じていない。ただ、恐怖感だけが、そこに残っていた。
ゆかり……たすけて……まりさ……おねがい……たすけてよお……まりさ、あやまるから、まりさ、ねえまりさ……
五日目だった。まともな食事も与えられない。何度か試してみたが、無符打もやはり不発で霧散する。抵抗しようにも剛力は得られず男の首絞めや殴打に抵抗できない。
ひっ、あああっっ
おっ、流石にこれは締まるぜ
お前まだそれ使う気あんの?ある意味すげーよ
こんなになっても、まだそこいらの娘よりよっぽどきれーだからな。これ見ながらオナホ使えば抜けるだろ。それで、これってわけだ
これ、と言っている男が手に持っているのは煙草だった。男はペニスを霊夢の膣に入れ腰を動かしている。もう防御反応の愛液もまともに分泌されていないようだがそれ以上に連続使用が過ぎた道具はさもありなん、緩くなってペニスを摩擦するには些か密着度が落ちていた。この男の他にも霊夢の膣や尻穴を使う男はいて、中には無駄にでかいペニスの者がいる。彼が使い倒すと他の男にとってはスカなザマになるし、当の男にとってももう抜けない、自分の手でするほうがマシだというのだ。尻を叩いても、喉を締めても、腹を殴っても、霊夢の膣はもう動きが鈍い。だから男達はもう飽きかけていたが、この男は別の方法に気づいた。
こうするのさ
男は、煙草を、霊夢の太腿に乱暴に押し付ける。火の付いたまま。
あああっっ!いひぎっ!!
おおっ、まだ締まるじゃねーか。普段からそうしてりゃ、まだ可愛がってやるってのによ
可愛がってやる、と言いながら、男は煙草をふかして加熱し、もう一度霊夢の、今度は腹の上に押し付ける。火種を押し付けられた箇所は丸い形の火傷になる、皮膚も肉も焼けて、煙草の先が離れた後には焼けた肉から血が滲み出していた。
あああああっっっっ!!!
あーだのうーだの気のない声しか出さなかったのに、まだいい声も出るじゃねーか。そらっ
いやああっ!熱い、あついいっ!ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!
執拗に何度も何度も煙草の火種を押し付けられ続けると、いい加減嫌な匂いが納屋の中にこもり始める。生きた人肉の焼ける匂いだ。
おいよせ、換気が悪いんだよこの部屋は。そんな匂い嗅がされたら、シコってるお前はいいがこっちは堪ったもんじゃねえ
わぁったよ。でも、いいぜ、あー射精る、まだまだイけるじゃんか、巫女さんよ……っっくっ!
どぶっ……ぶぶっ、びちゅっ
痛みに反応して収縮した膣肉は、好き嫌いに関わらず男のペニスに噛み付いてしまう。窄まった膣で摩擦した男はまるで排泄のように精子を放って、痛みに強ばる膣から肉棒を抜き去った。濡れたペニスに、霊夢の愛液は絡んでいない。ただ精液で汚れた肉竿を、いつもそうしているように霊夢の肌に擦りつけて拭く。あるいは無抵抗なのをいいことに口に含ませて舐め取らせる。ただ今回は、無数の火傷の痛みで、霊夢は顎を強く噛み締めている、口で掃除させることはできないからと霊夢の残り僅かな装束の端でヌメリを拭き取った。
へへ、焼けばまだ締まるのか。いいこと聞いたぜ。いい顔も声も、まだまだ見られそうじゃねえか
いや……やだ、もうむりです……おねがいします、やめてください、ごめんなさい、ごめんなさい、わたしがわるかったです、それはもう、やめてください、おねがいします、おねぎゃあああっっっ!!!
次の男が興味本位で挿入し、腰を振る間もなくにタバコの火を、今度は露出した乳首に押し当てた。
おっ、マジだ。締まる締まる
ゃめ……て……ください……おねがいします、おねがい……
うるせーよ、やめてじゃなくて、しめてりゃいーんだよ
じゅっ
あが、っっっ!
さっきの男は太腿と腹を焼いていたが、この男は霊夢の乳房を執拗に焼いている。腰を振るのとほとんど変わらない頻度で煙草を吹かし、火の勢いを増した火種を乳房に押し当てて焼き付けていく。
やあ……っ、ひぐっ……!いたい、いたいです……やめてください、おねがいします、ごめんなさい、ごめんなさいっっっ!!!
おー、しまる、こいつはいいぜ、あーイくぜ、このアマ、最後まで使い潰してやるから、感謝しろよっ!
ああっ、あっ、あづい、いたいぃっっっ!!!
イく、あー射精る、射精る射精るっ、オラ、最後にここを焼いてやるから、もっと締めろよ!
ひっ、やめ……ああああっっっっっっっ!!!!!
男が煙草を当てたのは、霊夢の膣口の真上。クリトリスがあるべき辺りだった。当然興奮もなにもない、充血もしていないし肥大もしていない。だが、鋭敏な場所であることには変わりがなかった。突然よきせぬ箇所に火を押し付けられた霊夢は痛みに絶叫する。痛み、恐怖、緊張。無理矢理に膣が引き締められる。
おっ、こいつぁ……っっく
ぶぶっ、ごぶっ
痛みの収縮で締めたくもない膣を締め、精液を搾り取ってしまう。大量に吐き出された精液が、膣の中を満たす。
おいおいw自分のちんぽにあたったらどうするつもりなんだよwww
それはそれで見てみたかったけどな、ひひひ
考えてなかったわ……でもまあ気持ちよかったからいいわ
お前はいいけどさ、次のことも考えろよ。マンコ血だらけじゃんか
処女犯してるみたいでいーだろ
こんなしまんねー処女いるかって
ちげーえねえわ、ははははは
またしても、明るい談笑。もう瀕死ともいえる霊夢の体を横に蹴り飛ばして、男達は酒を酌み交わして笑っている。
で、これもう流石に使うの辛くねえ?血塗れの蓮コラ状態なんだけど
そ、そんなことないよ!れいむちゃんはれいむちゃんだからね!どんな姿になっても、ボクのアイドルだよ!
見上げた根性だわ……
ね、煙草かして
お前吸わねえだろ
吸わなくても、れいむちゃんを愛せる!
……まあいいけどよ
煙草を受け取った男は霊夢の股の間に入り込んでから、煙草を、ふか……いや吸い込んだ。
ぐげっ!げほっ、げほっっ!
バカか。吸う必要ねえだろ。ふかしゃいいんだよ
くっそ、ボクじゃもうれいむちゃんを愛せないっていうのか!?そんなことない、そんなことないよ!!!
そう言って、男は霊夢の股の間を去り、納屋を飛び出していった。
何しに行ったんだあいつ
さあ
小一時間経って、男が帰ってきた。何か頭陀袋に入れて持って帰ってきたようだ。
れいむちゃんさ、酷いことされたら、気持ちいいんでしょ?叩かれたり、殴られたり、焼かれたりして、感じてるんでしょ?
ち、ちがう、ちがいます……
ちがうでしょ。感じてるでしょ
かんじてなんかいません、痛いだけです、だから、こんなことはもう、やめてくださ……
違うでしょ!!!!!??
ひっ、うぐぇ……っ!
男が突然形相を変えて霊夢の腹を殴る。
感じてるんだよねえ!!!!!??れいむちゃん、ひどいことされて、かんじてるんだよねえ!!!!???!?!?!?
そう行って、拳をもう一発入れるぞ、と霊夢の目の前にちらつかせる。恐怖に縮こまる霊夢。小さく、小さく、答えた。
はい……かんじて、ます……かんじてます、ひどいことされて……
やっぱり!よかったあ、れいむちゃんがよろこんでくれるなら、ボクいっぱいいろんなことを考えるよお❤
男は気持ちの悪い笑顔で、ニッコリと笑う。屈託のないそれを浮かべているようだが、霊夢にも、その場にいる男達にさえ、気味の悪い笑みに見えた。
……こいつやべーだろ
占い師様が真っ先に声かけたっていってたな
わかる気がするわ
男は袋の中を漁っている。どれにしようかな、などと、まるで楽しそうに声を弾ませていた。
何持ってきたんだお前
殺鼠剤で死んでたドブネズミの死体でしょ、そのへんで死んでたカラスの頭でしょ、あとタニシと、猫に食われてたフナ。ナメクジも拾ってきたよ。あとね、ミミズは大漁だったから、いっぱい入れてあげるね。もっとれいむちゃんが喜ぶ〝ひどいもの〟を探せればよかったんだけど、ごめんね!
男の言葉に霊夢が息を呑む。
や、やめて、そんなものいれたら、もうあなたたちも、つ、つかえない……ねえ、やめさせて、おねがいします、彼を止めて……何でもするから、もっと締めるから、口でもがんばるから、おねがい、おねがいします、そんなもの入れないで……
霊夢は他の男に、この男を止めてくれるように懇願する。が、男達の反応は冷ややかなものだった。
んー、もう飽きたって言うか?がばがばで気持ちよくないし、なんか、もうきたねーし
他になんか入れるもんねーか
他の男達は興味なさげに辺りを探るが、土塊か石ころしか無い。それでもいいかと、適当な泥の塊や石を男に手渡すと「これもいれとくね!」と、にっこり笑って……
っ!?や、やめて、ほんとうに、そんなことは……ひいぃぃっっっ!!!いや、いや、いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!
霊夢の膣の中に、何か無数にうねりくたる物が押し込められる。男の言葉が本当ならばそれは、ミミズだろう。
いや、いや、いや、やめて、やめてえええええええ!!!!!おねがい、おねがいおねがいそんなもの、入れないで、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!
うるせーな、だまれよ!
がすっ!
霊夢が半狂乱で叫ぶので、男の一人がいよいよ、それまでずっと避けていた箇所を殴った。顔だ。霊夢の頬を右から左に思い切りぶち抜いた。口の中が切れて血があふれる。だが、そんなことはどうでもいい、そんなものよりも、絶望的なものを股間に詰め込まれていることの方が。
毛羽だったものが入ってくる、それはカラスの死体だろうか。ぐいぐいと力任せに押し込められると、先に入っていたミミズが一層強く暴れ、それに、ぶちゅぶちゅと潰れているのがわかった。
やめて、やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!!!!!!!!
黙れよ、うっせーな!!
ごすっ、べきっ!
一発入れてしまった後は、男達も容赦がない。むしろ綺麗なままに取っておいた顔面にこそ、集中して拳が飛んできた。
尻の穴に何かを押し付けられている、硬い感触。大型のタニシが、尻の穴に押し込められようとしていた。
いやっ……いれないで、そんなものっっ!!!
強情だなあ!それっ
ぶちっ、ぶつっ!
指を無理に押し込められてそのまま乱暴に押し広げられた肛門が裂ける。そしてその隙間に、タニシが入り込んできた。一匹ではない、何匹かの硬い殻の感触が直腸内に押し込まれている。にゅぶ、と指が抜けると肛門が閉ま……らなかった。そんなものを入れられて平気なわけがない。霊夢はそれを押し出そうとケツをイキんだ。
もう、きもちいいんだから、ちゃんとのみこんでっ!
ケツ穴からタニシを吐き出そうとする肛門を、拳で殴りつける。ばきっ、めしっ、と音がして、霊夢の直腸の中でタニシの殻が砕けた。
ひぐ……ぁ……っ、そん、な……いや、いや、いやだ、たすけて、たすけて、たすけてたすけてたすけてたすけてえええええええええええええええええ!!!!
うるっせえな、黙れよ、もうお前を助けになんて、誰もこねえよ!
べきっ、ばきっ、めきっ!
再び顔面に殴打。唇が切れる。瞼が切れる。鼻がネジ曲がる。
いやあ……たすけて、まりさ、まりさ、まりさたすけてぇ……わたしがわるかったから、ごめんなさいってあやまるからぁ……
誰もこねえっつってんだろ、往生際が悪いな。博麗の巫女ってのはそれでも誰かが助けてくれると思ってんのか。ヒメサマ育ちはこれだからいけねえな!
ごんっ!!ばりんっ!!
男の一人が酒瓶をもって霊夢の頭を殴りつけた。瓶は砕けて割れたが、れいむのあたまにはそうとうのしょっくがあったらしい、しろめをむいて、れいむはだまってしまった。
あー、こいつはちょっと
やりすぎたかもなあ
ひ……ぁ……ごべんなざい……ごめんな、ぁい……
男達の姿を見て這いずって逃げる霊夢。体中に痣、瘤、内出血、それに斑を描く火傷の痕。股間には異物が入ったままで、肛門も歪に裂けている。それに加えて、いよいよ手を出してしまった顔への傷害が一気に目立っていた。瞼は切れて血を流し、折れた鼻は曲がっていて唇も変形している。頬も眼孔も内出血で青く腫れ上がっていた。
数日前まで自他共認める美少女だった顔が、体が、今は目の前で無様を晒している。醜く歪んで、それがどういった用途であろうとももう使い物にはなるまい。体もそうだが、何よりその変形した顔が、見ていて気味の悪いものになっていた。その顔を目に入れるのは、さしもの男達にとっても不快に思えるようだった。
おい、なんか袋ねえか。こんなツラ、いつまでも見てらんねえわ
これは?
おう、ちょうどいいか
手頃な麻袋があったので手にとって、這いずって逃げる霊夢を男は追い回して捕まえた。
ひ……ぁ……
おとなしくしてろよ。これをかぶれば、まだマシってもんだ
男は霊夢の頭に麻袋を被せ、首のあたりで麻紐を締める。
ぐぎ……が
袋の中から苦しそうな声が聞こえる。加減がわからず締め上げた手を、特に緩めるでもなくそこで止め、紐を結ぼうとする。
これ入れようぜ
そこに別の男が、愉快そうな声で近寄ってきた。土瓶を持っている。
何だ?
あぶらむしだよ
ふっ、ははははは、そいつはいい!
男は一旦袋を取り外し、土瓶にかぶせる。そして逆さまにして土瓶を降った。
かさ、かさかさかさ。
乾いた音が袋の中に移ったのを確かめるとその袋を霊夢の頭に被せた。
いや、いやっ、こんなっのっ……いやああああ!!!
うるせーっての
ぶちっ
男が袋越しに霊夢の顔を殴りつけると、どうやら〝あぶらむし〟ごと殴ってしまったらしい。霊夢の顔の上に、なにか液体のようなものが、ぶちゅりと吹き出した。
いや……ぁ……
叫びたいのを、顔面殴打を恐れて飲み下している霊夢。がくがくと体を震わせている。すすり上げる声が袋の中から聞こえてきた。同時に、カサカサと袋の中を走り回るあぶらむしの足音。
何匹いたんだ?
多分十二
一匹巫女の顔面で潰れてるから、あの小さい袋の中に十一匹走り回ってんのか、こりゃあ傑作だぜ!
ぎゃはははははは、と笑い転げる男達。
霊夢が袋の中で、あぶらむしの足取りを避けながら呼吸し、啜り泣く様を見て、男達はもう一晩笑って過ごした。楽しそうな笑い声が、納屋の中を明るく満たしている。
ただ一人、霊夢を除いては。
あたまいたい……
袋の中にいるあぶらむしが随分とおとなしくなった、いや、いなくなっていた。霊夢はそれを、食っていたのだ。あまりにも空腹が過ぎたのだろうか。口の中に入ってきた勢いでだろうか。それとも、おかしくなってしまったか。
流石にあぶらむしを食うとは思っていなかった男達は顔を引きつらせながら袋を外す。無様な変形顔面を貼り付けたままの博麗霊夢、顔面にはそれ以外にもあぶらむしの残骸や糞、更には危機を感じたのか外れた卵鞘までへばりついている。
流石に引くな
さわりたくねえんだけど
ぞんびみたい
男達が引き、一歩退いたのを、しかし霊夢は気にも留めない。そんなことをなんとも思っていないように、ただぶつぶつと何かをつぶやいている。聞けばそれは。
あたまが、いたい……
顔面の惨状を見れば、頭痛のひとつやふたつ何だという程の状態だが、今の霊夢はただ「あたまがいたい」と譫言のように吐き続けるだけ。食事もなく弱った体はふらふらと緩慢な様子で、どさり、とそのへんに座り込んだまま空中を眺めるようにしている。納屋の中に飛んでいるハエを目で追っているようにも見えたがそうでもないようにも見える。
あたらしいなかまが、いるのね
は?
あなた、さいしょはいなかったでしょお?
そう言って、霊夢はバタリと藁の上に倒れ込んだ。「あたま、いたい」まだつぶやいている。
風邪でも引いたんかな
まあどうでもいいけどな
霊夢の頭痛について誰も気にはしない、それよりも、霊夢が〝あたらしいなかま〟といって指をさしている方向のほうが気になった。霊夢はふわとおぼつかない腕で男達の方を指差す、だがその先には、壁しか無いように見えた。
ほらぁ、そのひと、さいしょはいなかったでしょお。またわたしをおかすのね
何いってんだよ、誰もいねえよ。怖がらせようたって、そうはいかねえぜ。もう手遅れだ、そんな方法で脅そうたって……
あはは!うそよ、あなたの後ろに、ほら、きいろいひとが立っているじゃない。いっしょにわたしおおかすんでしょ?おかすんでしょおお!?
うっせーよ!二人しかいねえってんだろ!!
がすっっ!
ぐげっ
ははは、ねえ、ふえた、ひと!きいろいひとと、あおいいひとになったわ。
おかしくなったか?
あー、あたまいたい。ねえあたまいたいんだけど
霊夢は頭を抑えながら藁の上でごろと転がっている。緩慢な様子なのでそれは、まるで子供がただ遊んでいるように見えた。たった数日、確かに尋常ではない方法だったとはいえ、こうして嫐り尽くしただけで壊れてしまうのか。博麗の巫女とて、ただ妖怪と結託しただけの人間だったのだと、妖怪退治の巫女が人間を守っているだなんて茶番につきあわされていたのだと、男達の間に安堵と怒りの両方がやってくる。
あーたーまーいーたーいー
知るか
あったまいたい、いたいあたまいたいー
うるせーよ!
がすっ!
もう一発殴る、今までの霊夢ならそれで怯えておとなしくなっただろう、しかし今度は違った。おとなしくするどころか、まるで遊んでもらっている子供がはしゃぐように、笑い転げながら、壁の方に話しかけている。
いった、きゃはは、なぐられた!あおいひと、みてる?なぐられた!あはははははは!
壊れたな
現実逃避じゃね?
ほっとけよ。と誰かが言ったので、全員が放っておくことにした。
一頻り笑い転げた霊夢は、いつの間にかおとなしくなってまた藁の上で横になっていた。小さく、何か、つぶやいている。
ねむい……すごく、ねむい……まりさ……
勝手に寝てろよ
それを聞いた男も対して気に留めず、ほうって置いた。
あー……
翌日、男達が目覚めると、博麗霊夢は目を見開いたまま動かなくなっていた。体温もなく、呼吸もしていない。脈拍もなく、つまり、死んでいた。既に青白くなり始めた肌が、不気味な柔らかさを残して硬直し始めている。
昨日様子が変だったのは、これか。山仕事で木から落ちた奴が、狐憑きのまま何日かしていきなり死ぬ奴だな
昨日「ねむい」と急にいったときの姿勢そのままだ、眠いといって何も言わなくなったあの時点で既に死んでいたのかも知れない。
開かれた瞼の中の目玉は無情な朝日を映し出しているが、それはもう乾いていた。半開きのままの唇も同じだ。
顔に残るいくつもの痣は青さを通り越して黒く変色している。体中の怪我の痕も生々しさを失って、妙に無味乾燥な物質に変貌したかのように見える。固くて、冷たくて、動かないものは、そう、もう生き物ではない。ただの、死体だ。
まー、あんだけぼかぼか頭殴ってりゃしゃーないか
あれって頭に怪我するとなるのか
おつむの内出血だ。血が中に沢山溜まると、こんな風に死ぬ。
へー……って、お前どこでそんなこと知ったんだよ。お医者の先生にでもなる気かあ?それとも占うとわかるのか?易ってすげーなあ。
あっち側を見ればすぐに分かるのさ。
男は得意そうにするでもなく、巫女の死に一切何の感慨さえ抱いていないような生気の無い表情で言う。
れいむちゃん!?れいむちゃん死んじゃったの!?じゃあセックスさせて!れいむちゃんの冷たい体とセックスするの、夢だったんだ!ああ、俺は何て運がいいんだろう、れいむちゃん屍姦出来るなんて、世界一の果報者だな!なあ、いいだろ?お前等もうれいむちゃんに興味なかったろ?
好きにしろ、そんなボコボコに変形した顔の女でよく勃起するな
小太りの男は、霊夢の死体を独り占めして屍姦できると知って、嬉しそうに動かなくなった青白い塊と、その穴を使ってオナニーしている。いや、男にとってはセックスのつもりなのかも知れないが、相手は既に命のないただの有機物の塊に過ぎない。固くなり濡れることのない冷たいヴァギナ型の穴と膣と同じ形の筒に、ペニスを擦りつけ、押し込み、中で射精している。
タンパク質ダッチワイフの使い心地は、きっといいものでは無いだろう。だが、男にとっては、とても幸せなセックスらしかった。無反応、瞳は何も映さず、どんなに乱暴に扱ってもがっくんがっくんと無抵抗でされるがまま、当然だ、ただの死体なのだから。その愛しの霊夢の死体を撫で回し、美味しそうに口づけ、肌を摺り合わせて性器を摩擦する男。何度も何度も、ただの物体となったそれを、冒涜していた。
機能を失った膣と子宮にむなしく、しかし夥しい量の精液が注ぎ込まれ、青白く編織した肌にも精液が振りかけられる。男達の暴力ですっかり見にくく変形した顔、唇、頬、それに鼻に、ペニスをなすりつけて擦りまくり、瞼を開いて乾いた眼球に向けて射精した。髪の毛を乱暴に掴んで引っ張り上げ、まるで頭だけをパペットみたいにぶら下げて自らの股ぐらに顔を寄せさせる。腰を前に出してペニスの先端を顔に押しつけ、また射精した。
すっごい、興奮する……!ハアッ、ハアッ
満足したらしい男は、霊夢の死体を、どっさと床に投げ捨てた。ただの有機性粗大ゴミと化した霊夢の死体は、精液まみれにされて転がっている。
……これ、どうするよ。見つかったらめんどくせーな
捨ててこようぜ
山なんかにこのまま捨てたら、誰かに見つかるだろ。こいつ、人間巫女とかいいながら妖怪と通じてたからな。どこに協力者がいるとも限らねえ
じゃあ、ちゃんと処分しないとダメか。どうする?
まあ、方法なんていくらでもあるさ
そういう男には、やはりどこか魂が抜けたような、冷徹を通り越した無機質な不気味さが漂っている。その目はいつの間にか人間のそれとは異なっている;円割鋭端楕円、世の理を徒に綯う者の目は、鋭く研ぎ澄まされていた。
食っちまうのが一番早い。博麗の巫女の肉だ、霊験あらたかだろう?
そろそろいいだろう
入れるぞ
周りに誰もいないか?
いたってわかりゃしねえよ、九十九祓にしか見えねえ。堂々としてろ
男達は湯を沸かした大鍋の中に、霊夢の体を放り込んだ。ぐらぐら煮立った湯も、霊夢だったものが放り込まれて温度が下がり、一瞬沸騰の勢いが収まった。
浮き上がってくる霊夢の死体を、男達は大きなしゃもじのような棒(それも祭事で大きな肉を煮込んで混ぜるときの道具だ)で突いて深く沈め続ける。そうしている内にしばらくして、霊夢の屍肉の有無に関わらず再び沸騰が続くようになった。また湯気が巻き上がり、泡立つ水面に少女の体が揺れる。
そうしてみると仮に死体であってもまだ幾らか血の気を残していたのだと言うことがよくわかった。沸騰する湯の中に泳ぐ霊夢だった屍肉は、みるみる青灰色を垂らしたような気味のよくない白色に変化していく。男達の言うように、これが猪や鹿の肉だったなら「旨そう」とも言えるのだろうが、形が人の形を保ったままではどうにも旨そうには見えない。
こうして人を煮込んでいる光景を見てよくわかるのは、人間には動物の表情がわからなくて良かったと言うことだ。なんせこうして今鍋の中で煮上がっていく博麗霊夢だったものの顔には、まだ人間らしい顔が付いていて、無表情とはいえ意志を持っていた頃と同じ形の目、人間と同じ言葉を話していた頃の口、それに鼻も頬も残っている。それはまるで生きているときと大して形を変えていない。開かれたままの目、半開きの口、硬直した四肢が、鍋の中で沸騰の対流に踊らされるままに揺れている。
どれくらい煮ればいいのか見当も付かないな、人間なんて煮たことないし
人間じゃねえよ。占い師様がゆってただろ。
どっちだって構うもんか。美味しく食おうって訳じゃねえんだ、一日だって煮込んでやってもいいだろ
えっ、俺食うつもりだった
好きにしろよ、まあ食っちまった方が、証拠隠滅って奴には都合がいいか
人間にしろハクレイにしろ、くえるのかあ?
博麗の巫女様の肉が不味いわけあるか!れいむちゃん!れいむちゃんれいむちゃんれいむちゃん!!
お前まだそのスタンスなのかよ
……まっず
うぇ、食えたもんじゃねえ
れいむちゃん……美味しくないよ……マヂで幻滅した……俺、博麗霊夢とか言う女に騙されてたんだな。こんなの犬猫でも食わねえよ、とんだクソ女だ!ファック、クソアマ霊夢、地獄に落ちやがれ!こんなクソ不味い女だなんてマジで失望したわ!今までの人生返せよ!!
めんどくせえ奴だな
れいむちゃんれいむちゃんと叫んでいた男は一転して憎しみのこもった表情で霊夢だったものの鍋と汁を川辺に力一杯ぶちまける。霊夢の肉の一欠片を、狂ったように踏みつけている。
鍋の中どうなってる?
どうって、普通に湯と死体だぜ
巫女だって、わかるか?
もう全然誰だかわかんねえな
じゃあもうその辺にしててこようぜ。獣が食うだろ
まあそうだな
クソ霊夢ちゃん、ざまあないね!ははは!このっ、このおっ!!俺の人生めちゃくちゃにしやがって!!
……手伝え、巫女の形を残すな
おう
男の一人が、煮上がって柔らかくなり、まだ湯気を立ち上らせている霊夢の死体を蹴った。茹で上がった屍肉はほぐれて崩れ、蹴られた部分は簡単に外れて飛び散る。鍋からひっくり返しただけでぐずぐずとあちこちが外れるように崩れた死体は、男が蹴り、踏み付け、石を投げつけられる度に容易に形を失って壊れていく。真っ白くなった肉は骨から外れ、煮凝った脂や肉は削げ落ちた。肉が抉り取れて一部顔を覗かせた内臓もすっかり煮上がって固まっている。骨も容易に砕けて無くなっていく。
茹で上がる過程で、顔の肉から水分と脂が失われるのか、博麗霊夢の顔はすっかり変わっていた。表情らしいもの失われてわからなくなり、落ち窪んだ眼孔から覗くのは小さくなった目玉。頬は痩けて唇も小さく萎んでいる。鼻は煮られて失われたのだろうか、平たい中央辺りに穴が二つ開いているだけになっている。
もはや博麗霊夢だとわからない顔面に、男の踵がめり込む。頭部を砕くつもりだったのかも知れないが、流石に頭蓋骨は頑丈なのかそうはならなず、代わりに顔面の表面に残っていた皮と僅かな肉をずるりと削ぎ落とす結果になった。顔面の肉が刮ぎ落ちて骨が覗く姿になったが、踏み砕けないと知った男は興味を失って他の部分を踏み、蹴りつけていた。
獣が肉を漁った形跡はあるが、煮込んだのが悪かったのか、死体がさっぱりとそこからなくなると言うことはなかった。まるで弄ばれたかのようにひっくり返ったり形を変えて、少しずれた場所に移動していたりしているだけだ。獣がどうにも手を付けない代わりに、博麗霊夢の死体には夥しいほどの虫が集っている。蠅が群がり蛆がわき、その他雑食・肉食性の虫がぞわぞわと群がっている。獣が稀にそれをひっくり返す時には姿を散らすが、ひと口ふた口と口にして不味かったのか興味を失う。獣や鳥がそれをついばまないのは、食い物に適さない何かがあるからだろうか。それでもその後には、そうして削れた屍肉にまた虫が集まってくる。奇妙なことに、蛍がその肉に取り付いているのが目撃された。この谷に近い村落では、本人にしか聞こえない声に誘われてここで命を断つ女とその肉を食う妖蛍の説話が言い伝えられていた。それもあり、この川辺には、わざわざここで九十九祓をするでもないと、人は寄り付かない。
夏の暑く水位の減った川辺にそうした何かの死体が転がっていることを、この件に関わりの無い村人達も承知はしていたが、それが博麗霊夢だとは思っていなかった。近く寄ればそれが人の姿だと言うことはわかるが、村で行方不明を出しているわけでもない以上は、村人ではない、道中行き倒れた旅人か家族のない物乞いかも知れないし、あるいはもっと別の、人ではないアンタッチャブルなものかも知れない。もしかすると昔話にある妖蛍の祟かもしれない。村人が敢えてそれに近寄って正体を確認することはなかった。動物の死体でも転がっているのだろうという程度の認識で落ち着き、それが博麗神社の巫女の死体だなんて、誰一人これっぽちも考えていなかった。
そうして炎天下、夏の川辺の湿気の多い空気に晒され、博麗霊夢だったものは、腐っていった。集る虫は数を増し、腐敗したいの表面は虫の背の色で塗り替えられている。ありとあらゆる場所は虫に食われて腐り崩れて、川辺の地面には腐敗液を染みさせていた。どす黒く粘性の高い博麗霊夢だった腐敗液は、川辺の石と砂にその姿をべっとりと染み込ませ、不気味な人型が塗り込められた。腐肉由来のその液体にも多くの虫が群がり、黒い粘りの中で蛆が身をくねらせ蠅が産卵している。もう獣は寄りつかない。すっかり汚物としてそこにあるだけの、喰らい判定の小さそうな平たいオブジェクトとなった。
だが、野晒しであることもあり、ある日多めの雨が降って増水した川に飲まれて、その姿もなくなってしまった。九相さえ、霊夢の体には訪れなかった。
霊夢を犯して殺した男達は、何食わぬ顔で日常を過ごしている。あれからあの鍋も普通に祭事に使われていて、霊夢が煮込まれた川辺でも、昔話を信じない怖いもの知らずの子供達がたまに遊んでいる。何事もない日々が、流れていた。
博麗の巫女は、見たこともない別の女にすげ変わっていたが、誰もその原因を気にする者は無かった。博麗神社の祭事とはそういうものである。人間には与り知らぬ原理で動き、理解できぬ周期で意味のわからない祭事をする。妖怪と人間の間に立つ巫女を輩出はするが、その祭事に人間に理解できるものが少ないこともまた、人々は知っていた。多くは妖怪のためのものだ、と。多くの人間にとって、ハクレイとは、救いの存在だが、同時に触れてはならないもの、怒らせてはならないもの。なればこそ、博麗神社は、〝神〟と言えた。だが故に、神域の内実もまた、人間には興味のないことになりつつある。今後それは、色合いを濃くしていくだろう。
あの占い師は、里には二度と現れなくなった。あの男たちも、占い師のことなど知らないという。何があったのか、何もなかったのか。
誰も知らない、知らされていない。